大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

ミトは影に促され、部屋に入る。
影がドアを閉めた音を聞いたとき、ミトは全てを諦めようと思った。
それなのに、自分の気持ちとは反対に、涙は溢れて止まらない。
立ち尽くしてポロポロと泣き続けるミト。

「そんなところに立ってないで、座れよ」

影が声をかけたが、ミトは動かない。
大きくため息をつく影。
もう、セルファを演じる気にはなれなかった。

「とにかく座れ」

強引に引っ張りベッドに座らせた。
ミトは特に抵抗もしなかったが、無言のままだ。

「おまえが好きな男って、セイラムだったのか…」

わかっていたが、それでも確認せずにはいられなかった。
ミトは無反応だ。

「良かったじゃねーか、願いが適って。片思いでも恋愛してみたかったんだろ?」

皮肉を言ってみたが、ミトは影を見ようともしない。

「自分が望んだことだろ。なのに、どうしてそんなに辛そうなんだ」

今度は辛辣な言葉を浴びせる影。
ミトは膝を抱えて顔を埋めた。

(一人になりたい…)

心底そう思った。
影が何を言おうが、どうでも良かった。

自分の想いがセイラムに拒否されたのだ
何をどう足掻いても、セイラムは自分をローザンの王子の側室としか扱わない。
それを知って、ミトは全ての気力を失った。

「わかっただろ?おまえがこの国で誰かと恋仲になるなんてありえないことだ」

口に出して確認されなくても、そんなことはわかってる。

「大人しく、側室としての立場を受け入れろよ」

もう、どうでもいい。

「ミト」

影の手が優しくミトの髪に触れる。
影は諦めずずミトに言葉をかけ続けた。