大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「ミト様、何があったか存じませんが、セルファ様もこうおっしゃっております。早く部屋にお戻りください。セルファ様、大変失礼致しました」

エイナはミトをセイラムから引き離そうとする。
ミトはいやいやと首を振った。

「ミト様!」

エイナの声が流石に恐くなる。
でも、そんなことは関係ない。

「セイラム、ミトを連れてこい」

影は命令した。
ミトは恐ろしくなって、縋るような目でセイラムを見上げた。

(お願い、助けて…)

セイラムがミトを見る。
確かに視線が絡まった。
かすかに期待するミト。
でも、その期待は無残に砕かれた。

「ミト様、お部屋へ」

いつもの穏やかな目とは違う、国を守る鋭い視線でセイラムはミトの腕を引き剥がした。

「いやなの…」

涙が溢れて顔をぐしゃぐしゃにしたミトを見ても、表情1つ動かさないセイラム。

「さあ、ミト様」

短く言われただけなのに、超えられない壁を感じた。
どんなに優しく振舞われても、それはローザンの王子の側室としてなのだ。

「ミト」

この上なく優しい声音で影が自分を呼ぶ。
それなのに、まるで逆らうなと言われているように感じた。

「ミト様っ!」

エイナがイライラしている。
ミトはもう一度セイラムを見た。
だけど、セイラムはもう自分を見てくれなかった。
絶望したミトは、のろのろとした足取りで影の元へ歩く。

「このことは他言無用だ」

「も、もちろんでございます!」

影のそう言われ、エイナは慌てて姿勢を正し、そして深く頭を下げた。