大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

そして、ユフィーリオも、ずっと眠れない夜を過ごしている。
王宮に戻ったその日から、セルファとは毎晩一緒に過ごしていた。
もうセルファが側室の部屋に行くことはない。
安心して良いはずなのに、不安は増すばかりだ。

セルファは変わった。
優しい笑顔で、いつもユフィーリオを労わり大切にしてくれるセルファ。
それなのに、言葉で言い表せない変化をユフィーリオは痛感していた。
夜は情熱的に自分を求めてくれるセルファ。
それなのに、心は遠くにいってしまったようだ。

(情熱的?本当にそうなのかしら?情熱的というよりも、一方的なだけのように感じるわ…)

決して乱暴にされているわけではない。
それどころか、丁寧に時間をかけて愛してくれている。
それでも、ユフィーリオはいつも孤独を感じていた。
心が通じ合っている実感がないのだ。

会話が減ったのが原因だろうか。
以前は他愛のない話をいつまでもしていたのに、今のセルファはすぐに忙しさを理由にして、ユフィーリオの言葉を受け流そうとする。

(どうしてこうなってしまったのかしら…)

ユフィーリオはため息をついた。
溢れそうになる涙を必死にこらえる。

(泣いたらダメ。セルファを苛つかせてしまう…)

ユフィーリオは今夜も眠れそうになかった。