大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

影からの今日1日の報告を、セルファは忌々しい気持ちで聞いていた。
それを悟られないよう、表情はいつものように余裕を見せていたが、心の中は影への憎しみでいっぱいだった
特にミトと過ごした時間の話は、セルファの心を逆撫でした。

(この男がいなければ、今頃は…)

影は相変わらずポーカーフェイスだ。
表情というものがない。
セルファはそれが気に食わなかった。

何食わぬ顔。
一切感情を乱さない影。
まるで、見下されているような気分になる。
自分の方が、絶対的強者だというのに。

「これで報告は終わりです」

自分と全く同じだと言われる影の声。
自分はこんな声をしているのか?
こんな顔で、こんな立ち振る舞いなのか?
気に食わない。

「わかった。下がりなさい」

そう言うと、影は深々と頭を下げ退室した。
その後姿を見て、セルファは初めて思った。
殺してやりたいと。