大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「う…」

ミトの口から、嗚咽が漏れる。
声を殺して泣くのを必死に堪えるミトに、影は手を止めた。
体を起こし、ミトを見る。
ミトは、顔をシーツに押し付けるようにして、震えながら耐えている。

「なんだよ…」

影は愕然とした。

「そこまで、嫌なのか…」

思わず呟いた。
ショックだった。

本当は、どんな理由があってもミトを抱くべきだとわかっている。
それが自分の務めであり、自分を守る最善の策だ。
なんとかして宥めすかせ、いや、強く抵抗されてもするべきなのだ。

だけど、できなかった。
影は何も言わずにミトから離れ、ベッドから下りた。

「時間が来たら帰る」

ミトは驚いて起き上がった。
影はソファへ移動し、横になっている。

「どうして?」

問いかけたが、答えは返ってこなかった。
それどころか、話しかけることもできない程の拒絶を感じた。
ミトは結局ベッドから動けず、気まずい2時間を過ごした。
時間が来ると、影は何も言わず部屋から出て行ってしまった。