大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「優しくしてやりたいけど、抵抗されたらそれも難しい。だから、暴れるな」

影はミトを見つめた。
ミトも自分を見つめ返す。
影はゆっくりと、顔を近づけた。

(オレを受け入れてくれ…)

「いーーーーやっ!!!」

ゴチン!

「ってーー!!!」

「いったぁ~…」

ミトは思いっきり頭突きをし、それが見事影のおでこにヒットしたのだが、ミト自身もなかなかに痛かった。

「アホかよ、っつーか、超石頭」

「いいからどいてよ!」

涙目で訴えるミト。
影だって充分石頭だと思う。
痛さで涙が出てきた。

「どかねーって」

影はムキになっていた。

(絶対にミトを説得してやる)

しかし、ついにミトは体全体で暴れ出した。

「もーいや!やだやだ!」

とはいえ、ミトの足には影の足が絡まり、両腕はつかまれているのだから、頭を振るくらいしかできないのだが。
影はミトの抵抗を暫く傍観することにした。
ミトが全力で暴れても、影はビクともしない。

「はーなーしーてー!」

それでも抵抗を続けながら、しばらく頭を振りまくるミト。
動かし過ぎてクラクラしてきた。
気分が悪くなりそうで、さすがにミトは動きを止める。
影は気付かれないようにため息をついた。

「だから、諦めろ」

大人しくなったミトの髪に、影が優しくキスをした。

「オレでいいじゃねーか」

そう言って、唇をミトに重ねた。
今までにない優しさで、影の唇が触れる。
ミトはそれに全く気付かない。