大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

次の日の夜。ついに晩餐会の時がきた。
ミトは真っ白なドレスを身に纏う。今日のためだけに用意されたドレスだ。
胸元には大きなサファイアの宝石があしらわれたネックレス。今日の昼に、セルファからプレゼントされたものである。
ミトの髪の色に良く似合い、身につけると気品に満ち溢れた姫ができあがった。
準備が整ったミトをセルファが迎えにきた。

「とてもミトに似合っています」

どストレートに褒められ、ミトは返答に困ってしまった。

「ありがとうございます」と、余裕のある笑顔で応えれば良いことはわかっているのだが、どうにも男女のシチュエーションには慣れない。
そんなミトを愛しい眼差しで見つめたセルファは「いきましょう」とミトをエスコートした。

セルファに連れられて会場に入ると、一斉に視線が注がれる。
ミトにとって、結婚とは心躍る楽しいイベントではなく仕事だ。
セルファが女性達の目を奪うほど素敵な男性であるとか、一生に一度しか着ないウェディングドレスを着ているとか、そんなことはどうでも良くなってしまう程に緊張していた。

セルファに導かれ、数え切れないほどの人々に挨拶をする。
笑顔はひきつり、場に合った言葉を選ぶために頭は常にフル回転。人生で最も疲れる作業だ。
それでもミトは頑張った。