大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

(どうしてこの雰囲気の中でユフィーリオの名を出す?)

セルファはミトの発言の意図を測りかねていた。
素晴らしい夜景を見ながら二人きり。
誰にも邪魔されないシチュエーションに、ミトは感動すると思っていた。
実際、夜景を目の前にして、ミトはとてもはしゃいで喜んでいた。
それなのに。

ロマンチックな雰囲気の中、自ら水を刺すようなことを言うミトの神経が理解できない。
夜景を見た瞬間の笑顔。あの自然な笑顔を自分に向けさせたい。
どうしたら、ミトは自分を見てくれるのか。
セルファは腕の力を少し緩めた。
とたんにミトが自分から離れようとする。
その動きを利用して、くるりとミトが自分の正面を向くようにさせ、そして再び抱き締めた。

(え!?)

想定外の動きに驚くミト。
セルファの胸にすっぽり収まっている。

「ユフィーリオのことは心配ない。今は、私とミトの時間を大切にしたい」

セルファはミトの頬に触れ、顔を上に向かせた。
明らかに緊張しているミト。
セルファは構わず唇を押し付けた。

ミトは体を強張らせ、しかし抵抗することなく、されるがままになっている。
ベッドの中ではどのようになるのか。
セルファはその時のミトを想像した。

(はやくおわってーーー!!!)

しかし、ミトの頭の中はそれだけしかない。
長く強引なキスが息苦しくて酸欠になりそうだ。
ほら、頭がボ~っとしてきた。

(このままだと私、窒素死するかも…)

ミトは泣きそうになった。

(だめ、もう苦しいし、無理!)

そう思ったと同時に、ダランとしていた自分の腕に力が篭った。