大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「等間隔に赤い光が見えるのはわかるかな?」

「あ、はい。あれですよね。たくさんありますね」

離れてくれないんだろうか。

「あれは警備の駐在所なんだ」

「は~、すごいですね~」

ミトはさり気無く離れようと試みてみたが、セルファの腕はガッシリとミトを掴んで離さない。

(この人、何考えてんだろう)

ミトはセルファの本質が全くわからない。
側室を拒むほどユフィーリオだけを愛しているはずだ。
影の代わりに仕方なく博愛主義を演じるにしても、ここまで自分にサービスする必要性はないと思うのに、なぜ?

「あの、ユフィーリオ様の病状はどうなんですか?」

もう、こうなったらストレートに聞くしかないとミトは思った。

「え?」

セルファの声が明らかに不機嫌になる
それに気付かない振りをしてミトは続けた。

「療養のため別邸にいらっしゃると聞いているのですが、ずっと臥せっているのか、一度もお目にかかっていません。ちょっと心配で…。セルファなら知ってるかなと思いまして…」

「ああ、そうか…。ミトは優しいんだね」

後ろから抱きしめられたままなので、セルファの表情はわからない。
しかし、さっきより確実に声が低くなっている。

「そんなことないです」

「私が病で臥せっている間、ユフィーリオには公務で無理をさせてしまったんだ。その疲れが出てしまったのかもしれないね。もう2~3日休めば、きっと良くなるんじゃないかな」

「それなら良かったです」

(それって、2~3日で影が復活するってことかな?)

そう思ったら、ミトは気持ちが軽くなってきた。
もし次回の相手がセルファだったら、自分は終わりだ。
影に来てもらわなければ困る。