大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「ミト様、セルファ様から伝言を承りました」

エイナがそう言ったのは、相変わらず雰囲気最悪の夕食が終わり、自室に戻ったときだった。

「なぁに?今日はセルファが来る日よね?」

今日はセルファが特別な場所に連れて行ってくれる日だ。

「はい、そうなのですが、今夜はこの後支度をして王宮に来ていただきたいとのことです。8時に別邸の出口へセイラム様がお迎えにあがるそうです。私も同行致します」

「あ、そういうことになったんだ」

確かに、セルファが一度別邸に来て再び王宮へ行くのは単なる二度手間だ。

「わかったわ。用意する」

「ミト様」

「え?って、なによ、その目は」

エイナはジト目でミトを見ていた。

「王宮案内なんて、いつの間にそんなことになったんですか?まさか、セルファ様に無茶なお願いをミト様がされたんですか?」

「違うわよ!あと、目が恐いっ」

「本当に?」

「もう、相変わらず信頼されてない自分が嫌になる…。本当よ!」

力いっぱい自分の正当性を主張するミト。

「では、どうしてこんなことに?夜に側室がセルファ様と王宮で過ごすなど、今まで聞いたことがございません」

「知らないわよ。誘ってきたのはセルファだし」

「まさかっ!日頃の行いの悪さから、お説教するために場所を変えようとお考えでは!?」

「ちょっと…」

「それは冗談ですけど」

しれっとエイナは言う。

「きっと、私を気に入ってくれたのよ」

ミトはエイナのお小言から逃げ出したい一心でそう言った。

「……だとしたら、セルファ様は少し変わった趣味をお持ちの方ということですね」

「エイナ、私のこと一体どう思ってる?」

今度はミトがジト目でエイナを睨んだ。

「ですから、冗談ですってば。
本当にセルファ様からのお誘いであるのでしたら、それでいいんですけど。では、お支度の準備を致しましょうね」

ミトはもう何も言うまいと思った。