大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

(どうして来てくれないの…)

別邸の自室に篭り、ユフィーリオは悲観していた。
あれからセルファと顔を合わせたのは1回だけ。
今まで意識したことすらなかったが、自分が夜セルファと過ごすということになっている日だけだった。

日中セルファが多忙なのはわかっている。
王宮と別邸は隣接しているが、建物自体が広大で移動に時間がかかるのだから、簡単には来れないだろう。
ユフィーリオに会うためだけにセルファが時間を作れないのは、いつも一緒に公務をしているから充分理解している。

それでも、とユフィーリオは思う。
それでも自分を大事に思っていたら、何とか都合をつけて来てくれるはずなのではないかと。
それに、夜は毎晩この別邸に来ているのだから、側室に会う前や会った後に、自分の部屋に少しでも顔を見せるのは容易なはずなのに、なぜしてくれないのかと。

もちろん、本人に直接問いただした。
頭では、そんなことをしたらセルファの気持ちが離れてしまうかもしれないとわかっているのに止められなかった。
セルファは少し困ったような、でも優しい顔で、ユフィーリオの分まで公務をこなしているため時間がつくれないこと、そして、同じ建物だからこそ側室に会う前後にユフィーリオの部屋へ行くのは、すぐに情報が側室達に伝わってしまうから、できないことを説明してくれた。

「ユフィならわかってくれるよね?僕もユフィに会いたいとずっと思っていたよ。今日をどれだけ待ちわびたか」

そう言って、セルファは抱き締めてくれた。

「体調はまだ優れないのかい?ちゃんと食べて寝ないと駄目だよ。早く元気になって、僕の部屋に来てほしい」

そう言って、優しくキスをしてくれた。
当然その先も。