大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「あなたの言う通り、最近眠れないの。この部屋にいると、どうしてもセルファを待ってしまうの。だから、しばらく別邸に戻る事にするわ…」

その言葉を聞いて、セルファはホッとした。
そして、ホッとしている自分に気付いて、後ろめたさを感じた。

「しっかり休んで、また元気なユフィーリオになってほしい。僕は待っているよ」

それでも、重荷から開放されたように気持ちに余裕が出て、優しい言葉がスルスルと口から出た。
そんなセルファをユフィーリオは濡れた瞳でじっと見つめる。
セルファはその視線を受け止めきれず、水を飲むために目線を外した。
セルファの様子に失望するユフィーリオ。

「私、体調が優れないから、しばらく公務もお休みさせていただくわ。
これから別邸に帰ります。セルファも体に気をつけて、無理しないで…」

そう言って、ベッドから降りた。

「え?これから?」

さすがに驚くセルファ。

(引き止めてくれるの…?)

ユフィーリオはかすかな期待にすがる。
しかし、またしてもセルファに裏切られることになる。

「そうか…、ユフィがそう言うなら仕方ない。ゆっくり体を休めるんだよ。僕も時間をみつけてユフィに会いに行くから」

その言葉に絶望して、ユフィーリオは無言で支度を整える。
部屋を出るとき、見送ったセルファがお別れのキスをしようとしたのを拒み、何も言わないまま部屋を出て行った。