大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「今で構いません。その者たちは?」

セイラムの後ろに女性が三人控えていた。
ミトの視線を受けて、一番年配の女性が前に出た。

「ようこそいらっしゃいました。ミト様。
私はリーノ=キタユキと申します。給仕の取りまとめ役をしております。どんな些細なことでも、何なりとお申し付けくださいませ」

リーノは50歳位だろうか。少しふくよかで、おっとりとした外見に反して、背筋はピシリと伸びている。
かなりのやり手なのだろう。物腰に隙が感じられない。

「それから、ローザンからも二人、ミト様のお世話役を用意いたしました。ユキ=サイカと、サキ=サイカです」

ユキとサキが深々と頭を下げる。
2人は年の近い姉妹で、面差しがとても良く似ていた。

「ありがとうございます。至らぬ点多々あるかと思いますが、エイナとマリア共々、どうか宜しくお願いいたします」

礼儀正しく挨拶するミト。

「食事をご用意いたします。こちらの部屋でよろしいでしょうか?」

「ええ。ありがとう。お願い致します」

ミトが返事をすると、リーノは一礼をし、ユキとサキを引きつれ部屋を出ていった。

「それでは、ミト様は部屋でお休みください。私も、これで失礼させていただきます」

セイラも部屋を出て行き、ミトはようやくホッと息をついた。

「ああ、疲れる…」

その場の床にへたり込む。

「ミト様、せめてベッドでお休みください」

エイナは苦笑しつつも、ミトに手を差し出した。

「ミト様のあんなかしこまった姿、初めて見ました」

マリアは目を丸くしている。

「どーゆー意味よ」

「ミト様にしては、上出来でしたね」

「なによ。エイナまで」

プッとふくれるミト。
でも、軽口を叩いてくれる相手がいるだけで、心が癒される。

「荷物は先に届いて、もう全て部屋にしまわれているそうです。着替えて寛いでください。マリア、私はミト様を手伝うから、食事の準備が出来たら声をかけてね」

「はい」