大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

ユフィーリオは暗い気分で朝を迎えた。
昨夜、セルファが部屋に帰ってきたのが明け方だったからだ。

影武者が病に倒れ、側室の相手をセルファ本人がすることになったと聞いたとき、ユフィーリオは酷く取り乱した。
セルファが自分以外の女性と触れ合うなんて耐えられない。信じたくなかった。

だけど、ローザンの王室は元々一夫多妻制。
最初からわかっていて婚姻を結んだ。
結婚してから影武者の存在を打ち明けられたときは驚いたが、そのお陰でセルファを独占できていた。
結婚する際、セルファは後々側室を迎え、自分だけのものではなくなるとわかっていて覚悟を決めていたはずだったのに、影武者のお陰でそのときの決意も忘れてしまっていたのだ。

セルファはユフィーリオに「何も心配はいらない」と言う。
初日、２日目は予定時刻通り帰ってきて、その後２人の時間を過ごした。
昨夜もそうなると思い、ずっと起きて待っていたのに、セルファは一向に戻ってこなかった。
セルファを待っている間、ユフィーリオは不安でおかしくなりそうだった。
だから、帰ってきたセルファの顔を見た瞬間、涙が溢れたのだろう。

セルファは遅くなったことを謝ってくれた。
ミトとの間には何もなく、ただ寝過ごしてしまっただけだと弁解していた。
そして、ユフィーリオにキスをして、たくさんの愛の言葉を注いでくれた。
それでも、ユフィーリオの涙はなかなか止まらない。

泣き止まないユフィーリオに、セルファは少し疲れていた。
どうして自分の気持ちをわかってくれないんだろう。
側室と夜を過ごすのは仕事の延長だ。
ユフィーリオへの気持ちが変わるはずないのに。

何度も何度も言葉で伝え、そして体で伝えているのに、ユフィーリオは日に日に情緒不安定になる。
確かに、ミトの部屋で寝過ごしてしまったのは自分のミスだ。
しかし、ミトとは会話もほとんどしていない。当然体の交わりも。
そう説明しても、ユフィーリオは泣くばかり。
泣きながら自分に抱かれていた。

そんなユフィを愛しく思うと同時に、どこか億劫に感じている自分がいた。
いつも以上に時間をかけて尽くし、ユフィーリオはようやく少し気持ちを落ち着かせたようだ。