大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「珍しいこともあるものですね」

いつもは必要以上に喋らないセイラムが声をかけてきた。

「何がだ?」

「セルファ様が寝過ごすなんて、初めてではありませんか?」

「そうだったか?」

「昼に夜に多忙で、お疲れなのでは?」

「大丈夫だ」

「それならば良いのですが…」

そして二人は黙々と早足で王宮へ歩いていたが、今度はセルファが問いかけた。

「最近ミトは王宮には行っていないようだね」

「はい」

「ミトは一体どういう妃だ?」

「…申し訳ありません。質問の意味が解りかねます」

「セイラムは何度かミトの王宮訪問に同行したのだろう?おまえの口からミトがどのような妃なのか感想を聞きたい」

「私は護衛の手配をしただけです。同行したと言いましても、ミト様を語れる程のことはなにもございません」

表情も声色も変えず、セイラムは淡々と答えた。
食い下がって聞くのも不自然かと思い、セルファはそれ以上質問を重ねなかった。
しばらく無言で歩く二人。

「気になりますか?」

セイラムが再び口を開いた。

「何のことだ?」

「ミト様が気になりますか?」

「……まぁ、珍しいタイプだからね」

ムキになるのもおかしいので、セルファは素直に認める。

「そうですか」

会話はそこで途切れた。
セイラムはミトのことを思っていた。
自分がセルファに側室の感想を述べるなど、立場を弁えない失礼な行為だと思い発言を濁したが、ミトには人を和ませる雰囲気があると感じていた。
ミトは人を立場や位に惑わされることなく、垣根を越えて相手の心を見つめる力がある。
常に立場を自覚して振舞うよう求められている自分にとって、ミトのそういった言動が心地よく感じるのだ。
きっとセルファもそうなのだろうとセイラムは思った。