大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】


「泣かないで、ユフィ」

唇が離れる。
少しだって離れたくない。
ずっと側にいたい。
ユフィーリオの涙は止まらない。
セルファは唇で涙をぬぐい、ユフィーリオの耳元でささやいた。

「君を悲しませたくないから、イザリアには影武者に行ってもらうことにしたよ」

「え…?」

「戦争をしに行くわけではないから危険はない。だけど、船旅も含めて10日間、何があるかわからないだろう?万が一のために、僕の身代わりになるのがあの男の役目だからね。すぐに話はついたよ。
僕はローザンにいないことになるから、公に外には出られないが、ユフィとは毎日会えるように計らって貰うよ。だから安心して」

セルファの言葉に、ユフィーリオは信じられないと目を見開いた。
涙はピタリと止まったようだ。

「本当…に?」

「ああ。もう決まったことだ」

ユフィーリオはぼんやりとセルファを見た。
影武者の存在は知っている。
知ってはいるが、見たことはない。
…ということになっている。

現実は影とユフィーリオは数回対面している。ユフィーリオに知らされていないからセルファだと思い込んでいるだけである。
そのため、ユフィーリオは影武者の存在に現実感がなかった。