大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

(この子に何を言っても通じないかも…)

ミトにしては珍しく、コミュニケーションを諦めたい気持ちになっていた。

「あなたは側室でも一番の新参者。立場を弁えて、大人しくなさると良いですわ。
最近はそうされていたのに、また王宮に足を運んで、一体何を考えているんですの?」

(なるほど。今まで面と向かって何も言われなかったのは、ティアラやユフィーリオがいたからなのね)

アリアは上下関係にはうるさいタイプのようだ。
と言っても、側室に立場の差はないことになっているのだが。
彼女にとって、側室歴がマウンティングの材料なのだろう。

「出歩くと楽しいじゃないですか。明日は王宮の庭園にあるカフェに行くんです。そうだ、よろしければ、アリア様もご一緒にいかがですか?」

とりあえず、ダメ元でミトはアリアを誘ってみる。
アリアの妙な誤解がとけたら良いなと思った。
無理っぽいが。
それに、アリアはこの広いダイニング室でもしかしたら1人の昼食になるかもしれない。
なんとなく、ユフィーリオは来ない予感があった。
1人で味気ない食事をするより、王宮のカフェランチの方がずっと楽しいとミトは思う。

「あら、それってもしかして、私に媚を売っていらっしゃるの?」

クスクスとアリアは笑う。

(こ、媚…)

またもや衝撃的な単語に、ミトは絶句するしかなかった。

「遠慮致しますわ。私、野外で食事なんていう野蛮な行為、苦手なんですの」

「はぁ…」

それっきり、アリアがミトに話しかけてくることはなかった。
どうやら、完璧に嫌われているらしい。