大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

別邸へ戻ると、間もなく夕食の時間になった。
ミトはいつも通りのタイミングでダイニング室に行くと、夕食もユフィーリオは不在だと知らされた。まだ王宮にいるらしい。

(アリアと2人で、また無言の食卓かぁ…)

ミトが仕方なく黙々と食事を口に運んでいたら、唐突にアリアが話しかけてきた。

「今日、王宮に行ってらしたんですね」

何の前触れもなく小さな声で問いかけられ、ミトはすっかり聞き逃してしまった。

「え?ごめんなさい、何かしら」

慌てて聞き返す。

「しらばっくれるんですか?王宮に行って、何を企んでらっしゃるの?」

トゲのある声でアリアは嫌味を言ったが、それで聞き逃した内容をミトは理解した。

「あ、ああ…王宮ね。行きましたよ。だって、セルファもいないし暇じゃないですか」

率直にそのままの気持ちを言葉にするミト。

「そうやって誤魔化すんですか?でも、私は騙されません。王宮の人々の人気取りだなんて、ずいぶんと浅ましいですね」

ミトはポカンとしてしまった。
ティアラからいろいろ話は聞いてはいたが、実際にミトが目にしていたアリアは、気弱で誰かの後ろに隠れているような少女の印象だった。
そのアリアから、まさか「浅ましい」という単語が出ようとは。

「どんなに頑張っても、正妻はユフィーリオ。彼女が死んだりしなければ、この事実は変わらないですよ。無駄な努力ですわ」

そう言って笑うアリアの顔の、なんと意地悪そうなことか。
アリアは勝手に想像力をふくらませて、ミトの人格を決めつけているようだ。
きっと、アリアから見たミトは、八方美人を装った策略家なのだろう。