大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

しばらくく歩くと、セイラムの姿を見つけた。こちらに向かって歩きながら、何やら指示を出しているようだった。
なんとなく立ち止まるミト。
セイラムはミトに気付いたようで、一緒にいた者に何かを言った後にやってきた。

「ミト様、こちらに御用でしょうか?」

第一印象と変わらない柔和な印象。

「いえ、また見学しているだけ…ですわ」

ついぞんざいな言葉遣いになりそうなところを、ギリギリで踏み止まる。

「そうですか。何かありましたら、おっしゃってください」

セイラムは目を細めた。

(なんだろう…この人ってホッとするのよね)

「ありがとう」

「では、私はこれで」

「あのっ」

ミトは立ち去ろうとするセイラムの言葉を遮った。

「はい」

(思わず引き止めちゃったけど、何を言おう…)

慌てて話題を探すミト。
セイラムは気を悪くする様子もなく、穏やかに待ってくれている。

「え~と…、あの、セルファ様もいないので、しばらくまた王宮を色々と見学させていただきたいと思うのですが、おすすめの場所ってありますか?」

なんとか質問を絞り出す。

「そうですね…」

「あ、ごめんなさい、お忙しいのに呼び止めちゃったりして」

急に申し訳なくなってしまうミト。

「いえ、全く構いません。
南の庭園には行かれましたか?今さまざまな花の見頃で、とても綺麗です。それから、王宮の地下にローザンの宝石を展示している場所があります。見学には許可がいりますが、もしご覧になりたいのでしたら、すぐに手続き致します」

「どちらも是非拝見させていただきたいわ」

考えなしに質問してしまったが、2カ所も紹介してもらってミトは嬉しくなった。