大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「マーケット！行く行く！行くわ！」

ワクワクするミト。

「かしこまりました。それで、今日はどちらに行かれますか？」

「う～ん、そうねぇ～、気の向くままに、歩いてもいいかしら。久しぶりだし」

「はい。では、私は後ろについて参ります」

ということで、ミトの王宮内散歩が始まった。
久しぶりの王宮は何もかもが新鮮だった。
別邸も広いが、同じ場所に長らくいるのは、やはり退屈だ。
上機嫌に王宮を散策した。

ミトが歩いていると、王宮で働く人たちが道を空け、壁際に立ち頭をさげる。

ラミリアでは王宮内の人とはほぼ顔見知り以上で、皆ミトを見つけると笑顔で挨拶してくれたものだ。
ミトとしては恭しく頭を下げられるのは慣れず居心地が悪いのだが、ローザンではこれが通常なのだから習わなければならない。
とは言え、堅苦しいのはやっぱり苦手だ。

「こんにちは」

だからミトは頭を下げてくれた人たちに笑顔で挨拶をすることにした。
驚かれて恐縮しまくる人も少なくなかった。

「そうだ、今日は展望台に行ってみよう。あれ？こっちだったかしら？」

今日は雲一つない晴天だ。高いところからローザンを見渡してみたかった。
きっとラミリアとは全く違う景色が見れるだろう。

「いえ、こちらですよ。ご案内致します」

久しぶりな上に広すぎる王宮。
初日に一通りの地理をユキに教えてもらったのだが、すっかり記憶が曖昧だ。
ミトはユキの後に着いて行った。