大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

ここ数日の影は、寝る間もないほど多忙だった。
出国の準備、イザリア国訪問のための会議、会議、会議。
新しく覚えなければならない内容も多く、限界まで疲労していた。

最後の力を振り絞って別邸に来たが、ティアラとアリアに引き止められ影は心底うんざりしていた。
だから、ミトの顔を見た瞬間、全てを放棄したくなったのだ。
自分の正体を知っているミトの前で、それでもセルファを続ける意味がわからなくなった。
影は自分の中にミトへの甘えがあることには気付いていない。

「で、なんで『やっぱり』なんだ?」

距離はそのままに、口調だけを戻して影は聞いた。
ミトはどいてもらうことを諦めた。

「あなたとても疲れていたし、なんとなく、セルファがユフィーリオ様と10日間も離れるなんて、了承しないんじゃないかな~と思ったから…」

「ふ~ん」

(やっぱりミトは人を見る目があるな)

その言葉は飲み込む影。
セルファとユフィーリオの話題などどうでも良かった。

「まぁ、どっちでもいいだろ」

影はミトに軽くキスをする。

「!!!」

油断していたミトは慌てた。

「なんだよ、いい加減慣れろよ」

「そんなこと言われても!で、あなたが行くの?」

「教える義務はねーよ」

「んんっ」

「ほら、暴れんな」

影は本格的にミトにキスをすることにした。
しばらくの辛抱だと思い、ミトは抵抗せずされるがままになっている。
それを良いことに、影はミトに体に触れた。
あまりの疲れに理性が上手く働かないようだ。

「んんーーー!!」

しかし、ミトが暴れだす。

(ちっ、これくらいにしとくか)

影はすっと体を離した。

「もう!なんなのよ!心配して損した!」

「怒った顔も可愛いですよ、ミト」

「なんでそこでセルファなのよー!!」

「はっは!」

影は声を出して笑った。
ミトと出会い、影は初めて心から笑う自分を知る。
ミトのお陰で、疲労で憂鬱だった気分が払拭した。

「じゃ、そろそろ戻るわ。留守中あまり無茶するなよ。ミト」

(あれ?今優しいこと言った?)

「う、うん。あなたも、気をつけてね」

「ええ、ミト。ありがとう」

そう言って微笑んだ顔はセルファだった。