大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

「さて、こっちで最後の仕事をするか」

ミトがコップを片付けてベッドに戻ると、影はそう言ってミトの腕を引っ張りベッドに座らせた。

「え！？今日はいいんじゃない？」

慌てるミト。
もうこのまま帰ると思っていたのに。

「そうもいかない」

影の綺麗な顔が迫ってくる。

「ね、ねぇ！こっちで最後の仕事って？」

ミトは何とか雰囲気を変えようと言葉を発した。

「なんでもねーよ」

「やっぱり、あなたが明日イザリアに行くの？」

その言葉に影の動きが止まった。

「やっぱりってどういう意味だ。誰かに何か聞いたのか？」

「そんなはずないじゃない。あなたの存在を私が知ってるってこと、誰も知らないんだから」

「そりゃそうか、じゃぁ、やっぱりってどういう意味だ？」

「と、とりあえず少し離れてよ」

未だ影の顔は至近距離だ。
全くもって落ち着かない。

「教えて下さい、ミト」

しかし、影は離れるどころかセルファとなって、ミトの頬に優しく触れた。

「遊ばないで！それに、セルファになってない方がいいわ」

ミトは真っ赤だ。

（生意気な女）

そう思いながらも、影は満更でもない。
セルファより自分の方が良いと言われているようで嬉しかったのだ。