「ここまでの護衛、ご苦労だった。そなたにも部屋を用意した。休んで行くと良い」
「恐縮ではございますが、私はここで失礼させていただきます」
「そうか。残念だが仕方ない。さて、セルファ」
「はい」
セルファは前に進み出た。
「ミト姫を案内してやりなさい」
「はい」
セルファはミトの前まで来ると、きれいな笑顔を向けた。
「さあ、行きましょう」
「はい。ありがとうございます。それでは、失礼致します」
ミトはシルファとエイリーナに深く頭を下げてから、セルファの顔を見上げた。
黄金に輝く髪は少し長く、一本に結ばれている。下ろしたら肩くらいまでありそうだ。
瞳はサファイアのように美しいブルー。
顔は知っていたが、こんなに間近で見たのは初めてだった。
「どうしました?」
まじまじと見つめられ、セルファは首をかしげた。
「いいえ、なんでもないです」
さっと目を逸らすミト。
(いけない。つい観察しちゃった…)
なるほど、美しい男である。
だけど、ピンとこない。この人と結婚するという現実が。
しかも、既にセルファには3人の妻がいるわけで。
ラミリア王国は一夫一妻のため、ミトにとって複数人との結婚生活は全くの未知の世界。イメージすら沸かなかった。
「疲れたでしょう?ふかふかのベッドを用意しましたから、ゆっくり休んでください。さあ、こちらです」
低く、それでいて聞き取りやすい声。
セルファからは常に暖かで優しい雰囲気が滲み出ている。
だけど、情熱とか、親愛とか、深くて強い感情を一切感じない。
(まあ、なんせ政略結婚だし、私は4分の1になるわけだし、初日はこんなものかな)
自分だって、恋焦がれる気持ちとか、切ない胸の苦しみなど全くない。
結婚相手とはいえ、お互い初対面なのだから当然だろう。
ミトの使命は一国の姫としてしとやかに礼儀正しく装い、この国に大人しく馴染むことだ。
少なくとも、暖かく歓迎されていることだけはわかる。それ以上、何を求めようというのか。
以前恋愛小説で読んだ「お互いが一目惚れで運命の相手感バリバリ」みたいなドラマは、やっぱり起こらないのである。
ミトは、誰にも気付かれないよう小さな小さなため息をついてから、セルファの後に続くのだった。
「恐縮ではございますが、私はここで失礼させていただきます」
「そうか。残念だが仕方ない。さて、セルファ」
「はい」
セルファは前に進み出た。
「ミト姫を案内してやりなさい」
「はい」
セルファはミトの前まで来ると、きれいな笑顔を向けた。
「さあ、行きましょう」
「はい。ありがとうございます。それでは、失礼致します」
ミトはシルファとエイリーナに深く頭を下げてから、セルファの顔を見上げた。
黄金に輝く髪は少し長く、一本に結ばれている。下ろしたら肩くらいまでありそうだ。
瞳はサファイアのように美しいブルー。
顔は知っていたが、こんなに間近で見たのは初めてだった。
「どうしました?」
まじまじと見つめられ、セルファは首をかしげた。
「いいえ、なんでもないです」
さっと目を逸らすミト。
(いけない。つい観察しちゃった…)
なるほど、美しい男である。
だけど、ピンとこない。この人と結婚するという現実が。
しかも、既にセルファには3人の妻がいるわけで。
ラミリア王国は一夫一妻のため、ミトにとって複数人との結婚生活は全くの未知の世界。イメージすら沸かなかった。
「疲れたでしょう?ふかふかのベッドを用意しましたから、ゆっくり休んでください。さあ、こちらです」
低く、それでいて聞き取りやすい声。
セルファからは常に暖かで優しい雰囲気が滲み出ている。
だけど、情熱とか、親愛とか、深くて強い感情を一切感じない。
(まあ、なんせ政略結婚だし、私は4分の1になるわけだし、初日はこんなものかな)
自分だって、恋焦がれる気持ちとか、切ない胸の苦しみなど全くない。
結婚相手とはいえ、お互い初対面なのだから当然だろう。
ミトの使命は一国の姫としてしとやかに礼儀正しく装い、この国に大人しく馴染むことだ。
少なくとも、暖かく歓迎されていることだけはわかる。それ以上、何を求めようというのか。
以前恋愛小説で読んだ「お互いが一目惚れで運命の相手感バリバリ」みたいなドラマは、やっぱり起こらないのである。
ミトは、誰にも気付かれないよう小さな小さなため息をついてから、セルファの後に続くのだった。



