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セントベリー学園の大ホールでは、煌びやかに着飾った若い男女が集まっていた。もうほとんどの生徒が集合し、仲間内で談笑している。
そんな中、カツンとヒールを響かせて一人の女子生徒が会場内に入ってきた。
スリットの入った真っ赤なドレスに身を包み、上には黒のボレロを纏っている――イザベルだ。
金褐色の髪を綺麗に結い上げ、耳にはルビーのピアスをつけている。普段はしないメイクをしっかりしているのも相俟って妙に色っぽい。
イザベルのいつもとは違う凛とした雰囲気に、男子生徒だけでなく女子生徒も釘づけになった。
それまで賑やかだった会場は水を打ったように静まり返る。
全生徒の視線が集まる中、イザベルは手にしていた黒の扇子を広げて優雅に扇ぐ。堂々とした佇まいは周りの視線なんて気にしていない様子だった。
すると静寂を破るように、鈴を転がすような声が響いた。
「ああイザベル、今までどうして会いにきてくれなかったの? あなたが面倒見てくれないと私は生きていけないのに。あの時のことは謝るからどうか許して!」
生徒たちの間から現れたのはロブを引き連れたアデルだった。
アデルはフリルがたっぷりついたピンク色のドレスを着ていて、色味に合わせて真珠のイヤリングとネックレスをしている。金色の髪もふんわりと纏め、耳の辺りに白花を挿していた。
イザベルは扇いでいた扇子を顔の前で止め、視線だけをアデルに向けた。アデルは目に涙を浮かべて必死に許しを乞うている。側から見るとその姿は非常にいじらしい。
イザベルの妖艶さに魅了されていた生徒たちはアデルの発言から疑念を抱き始めた。



