と、ため息をついた時だった。
カツカツと靴音を鳴らしながら大柄な女性が近づいてきた。
「ハーイ、悠輝よね」
「あっ」と、声をかけられた悠輝が絶句している。
「なによ、グリズリーに出くわしたみたいな顔して」
両手をあげて襲いかかるような仕草でおどける女性の顔は日本人だが、どうもアクセントが英語っぽい。
「だって、まさか、こんなところで会うとは思わなかったからさ」
「おととい日本に来たばかりなのよ。ボスのアテンドでね」
二人のやりとりを眺めていた翠に悠輝が紹介してくれる。
「こちらはね、落窪レイナさん。蒼也がアメリカに留学してたときの同期なんだ。僕もあの時短期留学してただろ。それで世話になってね」
「ハァイ、レイナです」と、いきなり翠の手をつかむ。「で、あなたが蒼也のワイフ?」
――え?
「あ、はい、ご存じでしたか?」
「うん、だって、しょっちゅうメールのやりとりしてるから」
「そうだったんですか」
そんな話は聞いたことがなかった翠は戸惑いを隠せなかった。
「会いたかったのよ」と、レイナはつかんだ手を引いて翠の肩を抱く。「なんと言っても、あの蒼也のワイフだもんね」
悠輝がまた声をかけてきた配信者たちの相手をし始めたので、レイナが適当に料理を見繕いながら翠を窓際に招き寄せた。
「私ね、アメリカ生まれのアメリカ育ちで、肉とアイスクリームでできてる大女だけど、両親は日本人なのよ」
曖昧に笑みを浮かべる翠にレイナがまくしたてる。
「うふふ、日本語なのに、やっぱり話し方はアメリカ人でしょ。日本的な気づかいとか苦手でごめんなさいね」
フルーツの盛り合わせにフォークを刺して次々に口へ運びながらレイナは窓に顔を近づける。
「ゴージャスな夜景よね。アメリカのクリスマスパーティーで蒼也と二人で見た花火を思い出すわね」
「えっ」
思わず声が出てしまう。
「ああ、変な意味じゃないのよ」と、フォークに差したメロンを振る。「ただの過去の事実ね。彼とはビジネスのパートナーで、戦友なのよ」
メロンを口に押し込み、レイナはウィンクをしてみせた。
カツカツと靴音を鳴らしながら大柄な女性が近づいてきた。
「ハーイ、悠輝よね」
「あっ」と、声をかけられた悠輝が絶句している。
「なによ、グリズリーに出くわしたみたいな顔して」
両手をあげて襲いかかるような仕草でおどける女性の顔は日本人だが、どうもアクセントが英語っぽい。
「だって、まさか、こんなところで会うとは思わなかったからさ」
「おととい日本に来たばかりなのよ。ボスのアテンドでね」
二人のやりとりを眺めていた翠に悠輝が紹介してくれる。
「こちらはね、落窪レイナさん。蒼也がアメリカに留学してたときの同期なんだ。僕もあの時短期留学してただろ。それで世話になってね」
「ハァイ、レイナです」と、いきなり翠の手をつかむ。「で、あなたが蒼也のワイフ?」
――え?
「あ、はい、ご存じでしたか?」
「うん、だって、しょっちゅうメールのやりとりしてるから」
「そうだったんですか」
そんな話は聞いたことがなかった翠は戸惑いを隠せなかった。
「会いたかったのよ」と、レイナはつかんだ手を引いて翠の肩を抱く。「なんと言っても、あの蒼也のワイフだもんね」
悠輝がまた声をかけてきた配信者たちの相手をし始めたので、レイナが適当に料理を見繕いながら翠を窓際に招き寄せた。
「私ね、アメリカ生まれのアメリカ育ちで、肉とアイスクリームでできてる大女だけど、両親は日本人なのよ」
曖昧に笑みを浮かべる翠にレイナがまくしたてる。
「うふふ、日本語なのに、やっぱり話し方はアメリカ人でしょ。日本的な気づかいとか苦手でごめんなさいね」
フルーツの盛り合わせにフォークを刺して次々に口へ運びながらレイナは窓に顔を近づける。
「ゴージャスな夜景よね。アメリカのクリスマスパーティーで蒼也と二人で見た花火を思い出すわね」
「えっ」
思わず声が出てしまう。
「ああ、変な意味じゃないのよ」と、フォークに差したメロンを振る。「ただの過去の事実ね。彼とはビジネスのパートナーで、戦友なのよ」
メロンを口に押し込み、レイナはウィンクをしてみせた。



