「翠ちゃん、いつ見ても笑顔が素敵だよね。他の連中もチラチラ視線を送ったりしててさ、ガードするのにヒヤヒヤだったよ」
話しかければかけるほど意固地になるようで、返事がない。
「少しは妬いたら?」と、悠輝が蒼也をのぞき込む。「許嫁が他の男と親しくしてるんだよ」
「他の男って、おまえだろうが」と、返事はしてもやはりタブレットから目を離さない。「俺の前では一度も笑顔なんか見せたことないけどな」
「そうなの?」
「なんかいつも口とがらせて怒ってんだよ。俺のことが好きじゃないだろ」
「そんなに突き放すんなら、僕が奪っちゃうよ」
と、そんな軽口を言った瞬間、ぎろりと獅子のような目で睨まれ、ゆるんでいた部屋の空気が一瞬で凍りつく。
「おお、こわ」
おびえる悠輝を蒼也が鼻で笑う。
「おまえなあ、調子に乗りすぎだぞ」
「え、どこが?」
と、しらばっくれる悠輝の頬に蒼也が人差し指を突きつける。
「そういうところだよ」
「ちゃんと言ってくれないと分からないなあ」
「お望みなら、分からせてやろうか」と、指のドリルをねじこんでくる。
「はいはい、勘弁してよ、もう。ごめんって、本気なわけないだろ」
「まったく俺の気も知らないでチャラチャラしやがって」
表情では笑っている蒼也の横顔を眺めながら悠輝は心の中でため息をついていた。
――まったく。
何も分かってないのは、蒼ちゃんの方だろ。
翠ちゃんだってほったらかしのくせにさ。
昔から罪な男だったよ。
『俺の気も知らないで』だって?
そっちこそ、僕の気も知らないでさ。
話しかければかけるほど意固地になるようで、返事がない。
「少しは妬いたら?」と、悠輝が蒼也をのぞき込む。「許嫁が他の男と親しくしてるんだよ」
「他の男って、おまえだろうが」と、返事はしてもやはりタブレットから目を離さない。「俺の前では一度も笑顔なんか見せたことないけどな」
「そうなの?」
「なんかいつも口とがらせて怒ってんだよ。俺のことが好きじゃないだろ」
「そんなに突き放すんなら、僕が奪っちゃうよ」
と、そんな軽口を言った瞬間、ぎろりと獅子のような目で睨まれ、ゆるんでいた部屋の空気が一瞬で凍りつく。
「おお、こわ」
おびえる悠輝を蒼也が鼻で笑う。
「おまえなあ、調子に乗りすぎだぞ」
「え、どこが?」
と、しらばっくれる悠輝の頬に蒼也が人差し指を突きつける。
「そういうところだよ」
「ちゃんと言ってくれないと分からないなあ」
「お望みなら、分からせてやろうか」と、指のドリルをねじこんでくる。
「はいはい、勘弁してよ、もう。ごめんって、本気なわけないだろ」
「まったく俺の気も知らないでチャラチャラしやがって」
表情では笑っている蒼也の横顔を眺めながら悠輝は心の中でため息をついていた。
――まったく。
何も分かってないのは、蒼ちゃんの方だろ。
翠ちゃんだってほったらかしのくせにさ。
昔から罪な男だったよ。
『俺の気も知らないで』だって?
そっちこそ、僕の気も知らないでさ。



