「わかりました。好きにしてください。
でも、婚約破棄に関する手続きは全てあなたにやっていただきます。
私は金輪際、あなたの婚約者としての努力を全て放棄させていただくわ。
関係各所の説明は、あなたからお願いします」

「なにっ!?」

あらら、アル、今更怯むの?

「当然ですよね。あなたの希望で私は一方的に婚約破棄されるのですから」

アルは憎々しげに私を睨んだ。
婚約者だった人から、こんな目で見られる日が来るなんて…。

「…いいだろう。全部僕がやってやる。だから今すぐ僕の視界から消えろ」

「だから、ちょっと待ってくださいってば!」

リリアがアルに駆け寄ってきた。

「アルノート様、私はあなたの婚約者の器じゃありません。
それに、何度も言っているように、ジェリーナ様から何も言われていません。
ジェリーナ様がおっしゃっているように、図書館では私が勝手に言葉をかけただけです!」

「そんなに怯えなくていいんだよ。リリア、本当のことを言ってくれ」

アルは優しい瞳でリリアを見た。
私、あんな目で見られたことなんか一度もない…。

「ですから、今申し上げたのが真実です!!」

この子すごい…。
こうやって善人の振りして、私に汚名を着せたのね…。
アルはすっかりリリアを信じ込んでしまっている。

「リリア様。もうお芝居はされなくても結構ですわ。
アルは私ではなくあなたと婚約すると決めたのですから。
自分の思惑通りに事が運んで、さぞ嬉しいでしょうね」

さすがの私も、嫌味を言わずにはいられないわ。