悪役令嬢と誤解され王子から婚約破棄を言い渡されましたが私にどうしろというのでしょう?

「カルシス=フェルナンド様、ジェリーナ=ユーヴィス様のご入場です!」

扉が開き、扉番の高らかな声が響く。
パーティー会場にいた人々の注目が一気に集まった。
注目されることに慣れているはずなのに、今日はとても緊張するわ…。
ルイザ様は大丈夫かしら…。
アルはどんな顔をしてるの?

「ジェリーナ様、体調は回復されましたか?」

一番近くにいた令嬢から声をかけれられた。
私が体調不良で遅れた設定は、参加者に周知されているのね…。

「もう大丈夫です。ご心配おかけして申し訳ありません」

小さく会釈して令嬢の前を通り過ぎる。
令嬢はまだ何か言いたい表情をしていたけど引き下がってくれた。
カルシスが歩みを止めずに私をエスコートしてくれて助かったわ。

ふと、強い視線を感じて顔を上げると、その先にはアルがいた。
横にはルイザが控えている。
アルの切ない表情に思わず動揺する私。

なぜ…そんな顔をするの…?

だけど、次の瞬間、アルの視線は私を通り過ぎていることがわかった。
アルの視線を追う。
その先にいたのはリリア…。
あのまま逃げてしまうと思っていたのに、卒業パーティーに参加するなんて…。

「リリア!」

アルは周囲の目も気にせず声を上げ、リリアの元へ大股で歩いて行った。
ルイザがその後を追う。
私の横を通り過ぎるアル。
私の存在に気づいていないかのよう…。

「リリア」

再びあの女の名を呼び、アルは両手を広げ抱きしめようとした。
当然卒業パーティーの参加者全員の注目が集まる。