「ルイザに話を聞きました。心配だから探して欲しいと言われたのです」

ルイザが…。
でも、彼女が私の味方とは限らないわよね…。

「どうか恐れないでください。私はジェリーナ様の味方です。もちろんルイザも」

カルシスは私と一定の距離を取り、言葉をつづけた。

「本来ならアルノート様にエスコートされてすでに会場入りしているはず。
そうしていないのは、ジェリーナ様にアルノート様との入場を拒否したい気持ちがあるからですよね?」

何が言いたいのかしら…。

「しかし、お立場上完全に拒否ができず、せめて入場時間をずらそうとここに隠れていたのではないですか?」

私はカルシスを見た。
ルイザからどんな話を聞いたのかしら…。
彼女には甘えてしまったけど、でも婚約破棄の話は一切しなかったのに…。

「どうか警戒を解いていただけないでしょうか?
私はジェリーナ様がどうなさりたいのかを知り、それを実現するために力を貸したいのです」

「どうして?」

カルシスとは何度も言葉を交わしたことがあるけど、彼が私のためにそこまでする理由が見つからない。
困惑していると、カルシスは言葉を続けた。

「アルノート様の所業に問題を感じているからです」

キッパリと言い切る。
フェルナンドは力ある家柄だけど、ユーヴィスと同じで王家に絶対的忠誠心を誓い、だからこそ今まで強い権力を維持してきた。
フェルナンドの当主ならばまだしも、まだ正式に継いでいないカルシスがアルに反発することなどできないはずなのに…。