悪役令嬢と誤解され王子から婚約破棄を言い渡されましたが私にどうしろというのでしょう?

もう、誰も何も発しない。
部屋はシーンと静まり返った。

とにかく、この場から逃げないと…。
ここにいたらダメだ。

ふと、以前読んだ王族と平民の恋愛小説の内容を思い出す。
あの時、主人公の平民女は貴族たちからいじめられて、尼の道を選ぼうとしたんだっけ。

「尼になるしかない」

苦し紛れだとわかっているけど、もう他に手は思いつかなかった。
幸い皆フリーズ状態。
ならば、逃げるが勝ちでしょ!

「もう!尼になるしかないです!こんなんじゃ家に迷惑かけるだけだし、もう帰れないから、尼になりますぅぅぅぅ!!!!さよなら!」

で、ダッシュ!

スタタタタタ!
ガチャ!バタン!

人生一番くらいの速度で部屋を飛び出し、私はそのままひたすら廊下を走った。
しばらく走りまくり、急に不安になって振り向く。
良かった…。誰も追ってこない。
追ってこないけど…。

「この先、どーすりゃいいの…」

自分が引き起こした最低最悪の展開に、私は途方に暮れるのだった。

どうしようどうしようどうしよう…。
私の頭の中は、今「どうしよう」の文字で埋め尽くされてる。
このままとんずらする?
いや、事態を放置して逃げて、それでどうなるの?

とりあえず、寮の自分の部屋に戻ろう。
アホ王子に無理矢理押し付けられたドレスを一刻も早く脱ぎたい。
部屋に向かいながらこれからのことを考えるしかない。