悪役令嬢と誤解され王子から婚約破棄を言い渡されましたが私にどうしろというのでしょう?

「リリア…」

ギクッ!

いきなり甘さ満載の声で名を呼ばれる。

コワッ!

アホ王子に目をつけられてからというもの、2人きりになると、何かと私に触れてこようとするのが一番苦痛だ…。
だから2人にならないようものすごく気を付けているんだけど、名指しで呼ばれると逆らえないのが困る…。

「それでは!私も明日の準備がありますので、失礼させていただきますね!」

私は妙な雰囲気を打ち消す勢いで、ハキハキとした声を出す。
そして、アホ王子の手が伸びてくる前に速やかに距離をとり、そのまま部屋を飛び出した。

ああ、平和な学園生活を送りたかったのに、なぜこんな厄介な事態になってしまったの!?
これも全部アホ王子と、アホ王子をフォローできないド真面目女のせいだ!
上流階級の問題を下級の私に投げてこないでよね!

怒っていないと恐ろしさに負けてしまいそうなので、心の中で毒付きながら寮に戻った。