悪役令嬢と誤解され王子から婚約破棄を言い渡されましたが私にどうしろというのでしょう?

疲れた…。
歩いている内に、涙は止まったみたい。
今日これからどうすれば良いのか考えなければ…。

アルはもう私と結婚する気はないだろう。
私だって、あんなふうに言われたら無理。

『それってまるっきりの受け身ですよね?』

『それとも、能動的な努力をしたんですか?』

『そもそも、ジェリーナ様はアルノート様を愛しているんですか?』

『そもそも、本当にこの国の上に立つ使命を持っているなら、なんとしてもこの危機を乗り越えるべきですよね?』

リリアに言われた言葉が蘇る。
同時に、アルのうつろな目を思い出す。
悔しさに、また涙がにじんできた。

卒業パーティーは欠席しよう…。
体調不良を理由にすればいい。
だけど…。

私は自分が着ているドレスを見た。
国王から贈られたドレスだ。
あの時、アルも一緒にいて、「早く着ている姿を見たい」と言っていたっけ…。

アルの婚約者として、将来の王妃として、今日の卒業パーティーはなんとしても出席しなければならないものだ。
ウルティナ国の重鎮や他国からの来賓を呼ぶのは、私とアルのお披露目の意味も含んでいるのだから、欠席するのは国王の顔に泥を塗ることになる。

婚約破棄は決定事項だけど、どう考えても、アルが即座にその話を周囲にするとは思えない。
さっきのアルは抜け殻だったもの。
とりあえず、何事もなかったように卒業パーティーに出席して、その後をアルに任せるのが最も穏便な方法だろう。

理性では自分がどうするべきかをわかっているのに、心がそれを拒否していた。

嫌だ。
もうアルの顔なんて見たくない。
平常心を保って卒業パーティーに出席する自信もない。
私はうずくまって泣いた。
もう、何もしたくない…。