てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「――来たれ、雷鳴」
 
 何かを挑発するように彼の指が空の彼方を招く。
 その指先にパチリと稲妻が走ったように見えたその時――
 
 ゴゴゴゴゴ……

「な、なに!?」
 
 唸り声だ。怪獣? いやいやまさか。
 それじゃあ犬……よりもっと大きい! オオカミ? 違う、これは動物じゃない。
 何かのエンジンにも似ている。車、ヘリコプター、次々と浮かぶ乗り物たち。
 
 でもそれのどれとも違うことを、私の中に眠る何かが告げていた。
 
 鳴神を見上げると、彼に手を引かれて窓辺に連れていかれる。

「さあ、とくとご覧あれ。お前に見せる最初のショータイムだ」
 
 パチン、と鳴神が指を鳴らした。
 
 その瞬間――

 空が弾け飛んだような閃光だった。
 その後を追いかけてお腹の奥に響くように空が唸る。

「きゃあああ!!」
 
 音と光、両方に驚いた私が耳を塞いでうずくまると、鳴神が寄り添うように顔を上に向かせてくれた。

「お前が望んだことだろ? ちゃーんと見てろって」
 
 かたかた震える手をぎゅっと握られる。ふしぎなことに、それだけで何故か窓の外を見る勇気が湧いた。

 窓から見渡す空はどこまでも真っ黒だ。しかしその中にチカチカと瞬いてみえる光がいくつも走る。
 それが稲光だと気づくのに時間はかからなかった。

「か、カミナリ? あなたが――やったの?」
 
 上擦った声を笑い飛ばしもせずに、鳴神は頷く。

「だから言ったろ? 俺はお前のカミサマだって」

 まだショーは終わりじゃねえぞと言いながら、鳴神は窓の外を指さす。
 すると唸るカミナリの間を縫うようにザアアアと勢いよく降り始めた雨音がノイズのように入り交じって、世界を雨模様に変えていく。
 
 窓枠を額縁に見立てるなら、まるでひとつの作品だ。

「……すごい…………」
 
「これでわかっただろ? 俺は雷を司るカミサマ、鳴神だ。ななみのおかげで実体を持てた。礼として、これからいくらでも雷を呼んでやるぜ」
 
 改めてそう名乗った鳴神を見つめる。
 
 とんでもない日々が始まりそうな予感が、空の唸り声と共に響いていた。