てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「言いたくないなら……カラダに聞いてやろうか?」
 
 金色の瞳をゆっくりと細めた男の子は、後頭部からするりと引き抜いた手で私の膝あたりをするりと撫でた。

 「んんー!」
 
 うそうそ、待って。こんな展開あり!?
 
 ぶんぶんと首を振って逃げようとする私が面白いのか、彼は顔を近づけてくる。
 一瞬、キスされるのかと思って身構えたけど、口を塞がれているのだからそれは無理だ。
 その代わり、首を振りまくってるせいで乱れた髪の間から覗く耳に彼はゆっくり顔を寄せた。

「なあ……教えてくれよ」
 
「……っ!」
 
 ぞくり、と体に電流が走ったみたいに跳ねた。

 「たった一言、お前の名前ひとつで最高を見せてやれるんだ。別に痛いことなんてしない。だから……お前を暴かせろ」
 
 そう囁かれているうちに、突っぱねていた手に力が入らなくなってくる。
 
 おとなしくなった私を見下ろした彼は、口を塞いでいた手を離した。
 
 いきなり酸素が入ってきて、体がびっくりして咳き込んでしまう。

 「けほっ」
 
 横向きになってけほけほと繰り返す私の背を、あたたかいものが撫でさする。
 鳴神と名乗る、彼の手だ。
 
 ……悪い人では、ないのかもしれない。
 
 我ながら絆されるのが早すぎると思うけど。

 咳き込みも落ち着いて、ちらりと横目で見れば鳴神は「ん?」と言いながらその先を待っていた。
 
 ……なんか悔しい。でも、気になるのは確かだ。

「……ななみ」
 
「へえ」
 
「御空ななみ! 私の名前! これで満足!?」
 
 こうなりゃヤケだ、の勢いで叫ぶと、鳴神は私の声にも負けないくらいの大きな声で笑った。
 私が助けを求める声よりも、鳴神の声のほうが遠くまで届くかもしれない。

「御空ななみ……いいねえ、俺を呼び出すのにぴったりの名前じゃねえか!」
 
 何かテンションの上がっていそうな鳴神にすっかり見とれていると、彼は勢いよく窓の外に目を向けた。