てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「帰ろうぜ。ななみ。雨に濡れたし、ちゃんと風呂入ってあったまれよ」
 
「う……うん。でもその前に、みんなのてるてる坊主、ちゃんと直してあげるからね」
 
 ティッシュじゃ不安だ。フェルトにしようか? 防水スプレーもかけるべきかも。
 
 そんなことをぐるぐる考えていると、手首を引っ張られて抱き止められる。
 
「それはもちろんだけどさ。お前が俺らを大事にしてくれるように、俺らもお前が一番大事。だから無理すんなよ」
 
「そうそう。てるてる坊主の補強なら俺らも知恵出すし」
 
「まずはななみさんの健康第一です。今日はずいぶんお疲れでしょう」
 
「そうだ。ななみさん、帰りが遅くなってますが、ご両親が心配しているのでは? 先に連絡したほうが……」
 
 口々に私を気にかけてくれる彼らにじんと胸の奥が熱くなる。
 
 また浮かんできた涙を指で拭って上を向く。
 
「あ!」
 
 私が指さした空を、3人も見つめる。

 
 すっかり雨の上がった夕暮れに、虹が掛かっていた。
 
 
「おやおや、おあつらえ向きですね」
 
「こういうの、エモいってヤツだよなあ」
 
「やっぱり……お天気は人を笑顔にするんですね」
 
 時雨さんが、晴人が、八雲くんが、虹の彼方に思いを馳せる。

 私もうっとりと見つめていると、鳴神がいつのまにか隣に立っていた。

 虹ではなく私を見下ろしている。
 
「鳴神、虹見ないの? きれいだよ」
 
 内緒話をするように、鳴神はそっと身を屈めて小さく囁いた。
 
 
 ――お前見てれば、それで充分。

 
「……っな……!」

 電光石火の口説き文句に、心臓がドッドッドッと早鐘を打つ。
 
 鳴神のスピードには、これからも勝てそうにない。