てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 やってしまった。
 
 刺しやすいように持ち替えた時、手が滑ってピンを指の腹に刺してしまう。ぷくりと赤い血が膨らんだ。

 「うわわ、ティッシュティッシュ」
 
 とっさに目についたティッシュをぐっと押し当ててみたものの……

 「これ、てるてる坊主じゃん!」
 
 あーあ。何やってるんだろう。
 
 せっかく作ったのに自分の血で汚しちゃうなんて、マヌケにも程がある。
 血がついたものをこのまま飾る気にもなれないし、捨てるしかないのかな。
 
 今までの自分の努力が水の泡になった気がして、悲しくなってズルズルと座り込む。
 
 こんな風にお天気だのみになって嫌なことから逃げようとするから、バチが当たったんだ。
 涙までじわりと浮かんできた。

 「うう……」
 
 こうなれば他のてるてる坊主も鼻かんで捨てちゃおう。

 そんなヤケっぱちになって鷲掴みにした、その時――

 「なぁに泣いてンだよ。嵐にしたいのはお前の天気じゃなくて空だろうが」

 男の子の声がした。

 「え? どこ? だれ?」
 
「こーこだって。ここ!」
 
「だからどこよっ」

 私に男兄弟はいない。そもそもここは私の部屋だ。なのにどうして他の人の声が……

「ったく、一番近くに居るんだから気づけよな……っ」

 何かがバチバチと唸る。
 
 風が巻き起こる。
 
 それが手の中で起きているとわかった時、てるてる坊主から目もくらむような光が走った。

 「きゃあああ!!」
 
 びっくりしてひっくり返るとテーブルに頭をぶつけそうになって……

 「あっぶね」
 
 すんでのところで後頭部を支えられる。
 
 誰に?
 
 これでもかと見開いた目には、稲妻みたいなレモンイエローの髪がさらりと揺れた。

 
 「間一髪。スピードは全てを超越する……ってな」
 
 
 きりりと整った眉。
 
 髪と同じくレモンイエローに輝く瞳はとてつもないカリスマ性を感じさせる。
 
 ニヤリと不敵に笑った口元はどこか歪んでいた。

 「あ……あなた、だれ」
 
 かろうじて出せた声はかすれていた。

 
 至近距離で尋ねたから聞き取れたであろうその問いに、彼は前髪を掻きあげて答える。
 
 
「俺は鳴神(なるかみ)……雷のカミサマだよ」