どのくらい経っただろう。
ゆっくりと――鳴神の行動の中で一番の遅さで唇が離される。
「……血の味だ」
「う……うん。偶然だけど、最初に会った時みたいに怪我したから、試してみようと思って。願いと血が……届いて欲しかったから」
「そうか。ななみにまた助けられたな」
「そんな! 助けられてるのはこっちだよ。今だって私だけじゃてるてる坊主を見つけられなかった。鳴神たちが、呼んでくれたんでしょう?」
「あー……まあ、ちっとはな。お前トロいからな」
「もう……」
すると、腰のあたりに何か気配を感じた。時雨さん達をしまったポケットだ。
「ななみをひとりじめするなって騒いでる」
「みんなにももう一度、会える?」
「このままほっといたら毎晩夢枕に立つ勢いだぞ」
「やだ、そんなことしないよ」
ごそごそとポケットから順番にてるてる坊主を取り出す。血のついた指先を押し当てようとすると、鳴神に遮られた。
「鳴神?」
「……あのさ」
あー、と視線を泳がせた鳴神が言い淀む姿は珍しい。
「普通に、指だけな。キスはなしで」
「!」
「キスは、俺だけ。覚えとけよ」
鳴神はシィと内緒話をするようにぴんと立てた人差し指を自分の唇に押し当てて、それから私の唇に触れさせた。
「……わかってる」
私も真似して指だけでキスを返す。
そして、あの日の再現のように、3人のてるてる坊主に血と願いをこめた。


