てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「ったく、カッコつけんのは俺の方だろ」
 
 はっと目を開ける。
 けれどすぐに目の前が白く染まって、てるてる坊主が脈打つように震えて、手のひらから風が巻き起こって――

 
「きゃ、ああ!」

 
 地の底から巻き起こる衝撃と、天から降ってくる光に目が眩む。
 
 後ろに倒れ込みそうになった体が、地面につく直前で後頭部からぐいっと抱き起こされた。
 
「……あっぶね。やっぱ、スピードはすべてを超越するってか」
 
 鼻が触れ合う距離で、レモンイエローが不敵に笑った。

「な、るかみ……!」
 
「おう」
 
 あんなことがあったのに、ちっともそれを感じさせない、日常の延長線上のように鳴神は軽く返事をした。
 
「鳴神、鳴神だよね?」
 
「おー」
 
「ほんとに本物?」
 
「俺の偽物がいたら会ってみたいくらいだけど?」
 
 あんなに必死になって呼んでいたのが嘘みたいに、ぽんぽんと交わされる会話が信じられなくて、でも、確かに鳴神はここにいて。
 
 袖をくしゃりと握りしめる。鳴神のぬくもりが伝わってくる。
 
「偽物なんて、いないよ。私にとって鳴神はたったひとり……大切な、カミナリの神様だよ」
 
「まあ……そうだな。お前も……ななみも俺にとってたったひとりの……大切な……」
 
 鳴神の腕が背中に回される。そっと腕の中で鳴神を見上げれば、レモンイエローの瞳が静かに細められた。
 
「大切な……なあに?」
 
「…………いちいち聞くな」
 
 むぎゅっと鼻をつままれる。
 
 突然のことに驚きつつも、やっぱり鳴神だと納得してしまう自分もいた。
 
 すぐに離された鼻をすんと鳴らして「もう!」と怒る。
 
「こんな時くらいちゃんと答え……」
 
 残念なことに、鳴神から答えを引き出すことができなかった。
 
 
 文句を言っている最中に、素早く唇が塞がれる。
 
 
 今までで一番近いレモンイエローのまなざしに囚われている間に、キスされているのだと気がついた。
 
 そのまま鳴神がぎこちなく目を閉じる。
 
 真似をして私もおずおずと瞼を下ろした。