てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 あとは鳴神、ただひとり。
 
「速さなら負けないって言ってるくせに、こーいう時に最後まで出てこないなんて、見つけたら文句言ってやろっと」
 
 真下から木を見上げる。生い茂った木は私の身長より遥かに高いのはもちろん、横幅もかなりのものだ。
 
「ここにいるんだよね、鳴神」
 
 答えは無い。
 代わりに雨音が大きくなった。
 どこからか雷鳴が聞こえてくる。
 
「カミナリが鳴ってる……鳴神だ」
 
 普段の私なら、雷鳴を聞いたとたんに震え上がって慌てて屋内に駆け込んでいただろう。
 
 でも、今は違う。
 
 ふっと後ろを振り返る。
 空にはいつのまにかすっかり黒さを増した雲が広がって、弱い稲光がフラッシュのように瞬いている。
 
「待ってて、鳴神」
 
 濡れた顔を軽く袖で拭う。
 時雨さんを見つけた時に折ってしまった枝を使って、地上から葉や枝を掻き分け鳴神を探す。
 時雨さんのように葉に絡まっているかもしれないので、なるべく丁寧にどけていく。
 
「返事して……カミナリでもなんでもいいから、答えて」
 
 このやり方じゃ高いところには目が届かない。
 木のくぼみに足を引っ掛けて体を持ち上げようとしたけれど、すべってうまくいかない。
 
 もっと身軽に動けたなら……そう思ったけれど、あいにくマラソン大会中止を神頼みするような私だもの。
 自分の鈍臭さがもどかしい。
 ゴロゴロッ、と低くカミナリが唸る。
 
 
 カミナリが――鳴神が、呼んでる。
 
 そうだ、私が呼んだから、鳴神はてるてる坊主から人の姿になったんだ。
 
 私のちっぽけな願いを叶えるために。
 
 私がスポーツ万能の陸上部員だったら、鳴神たちには出会わなかった。
 
 私が私だったから、鳴神たちは、応えてくれたんだ。

 その瞬間、どんどん暗くなるばかりだった世界が――昼間になった。