「やくもく、八雲くん……!」
落ちてからすぐ風に吹かれて、車の下に入り込んだのだろうか。
幸いなことに、八雲くんのてるてる坊主はあまり汚れていなかった。
けれど、裾のあたりはやはりボロボロだ。てるてる坊主本体にダメージを追ったことで人間の姿を保てなくなったみたいだ。
「八雲くん、私だよ、ななみだよ!」
両手で包み込んだ八雲くんに何度も呼びかける。
けれど――答えは返ってこない。
「ねえ、八雲くん、返事をして!」
グレーのペンで描いた顔についた砂をそっと手で払う。
無言のままのてるてる坊主をもう一度ぎゅっと抱きしめ、ポケットにしまった。
3人も見つけなければ。
八雲くんがここで見つかったということは、他の3人も飛ばされたり弾かれたりで遠くに行ってしまった可能性もある。
日が暮れるまでに間に合うだろうか。
きゅ、と握りしめた指先が冷たい。
「……ううん、間に合うかじゃなくて、見つけるの。何があっても」
そう声に出して自分を奮い立たせる。
その勢いで顔を上げた。
「あ」
八雲くんを見つけた車の屋根に白いものが乗っている。
ぴょんと飛び上がって取ろうとしたけれど、大型車の屋根は高くて届かない。
……ボンネットからよじのぼればいけるだろうか。
「……」
辺りを見回す。人の気配はない。
上を見る。誰も覗いてはいなかった。
「誰の車だかわからないけど……ごめんなさい!」
えいっと膝を乗せる。太陽が長時間当たっていた天板は熱い。
膝でフロントガラスまでにじりよって手を伸ばす。
「えいっ」
今度は見えている分、楽だった。
取り戻したてるてる坊主を覗き込む。
「晴人……!」
オレンジのペンで描いた顔は、屋根に落ちた時の衝撃でたわんでしまっていた。
「晴人、聞こえる? 私だよ、ななみ!」
やっぱり返事は返ってこない。
いつも明るく声の大きな晴人が静かなままなことに、余計に不安を煽られた。
「晴人、返事して!」
何度も揺さぶるように呼びかける。結果は同じだった。
頭の部分を丁寧に整えて輪ゴムを束ね直して、そっと八雲くんと反対側のポケットにしまう。
ずりずりと後ろに這いながら車を降りて、失礼しましたと頭を下げた。
とにかく八雲くんと晴人は見つかった。あとは時雨さんと鳴神だ。
「どこ……どこにいるの」
地面に膝を着いて車の下を一台一台覗き込む。
いない。
視界を徐々に上に上げていく。
まだ姿は見えない。
「落ち着いて、大丈夫、きっと……見つかる」
自分に言い聞かせながら深呼吸を繰り返す。
はあ、と深く息をついたところで、冷たい風が頬を撫でていった。
導かれるように顔を上げる。
どこからか流れてきた黒い雲が低くたれこめていた。
……ひと雨、くるのかもしれない。
もし暗くなるまで見つからなければ、家に帰って明日早く登校しようと考えていたのだけれど――
甘かった。
てるてる坊主はただのティッシュで作られている。
乾いた土の上や車の屋根ならともかく、一晩雨風にさらされてしまったら形を保つことすら難しくなる。
思っているよりも時間がない。
落ちてからすぐ風に吹かれて、車の下に入り込んだのだろうか。
幸いなことに、八雲くんのてるてる坊主はあまり汚れていなかった。
けれど、裾のあたりはやはりボロボロだ。てるてる坊主本体にダメージを追ったことで人間の姿を保てなくなったみたいだ。
「八雲くん、私だよ、ななみだよ!」
両手で包み込んだ八雲くんに何度も呼びかける。
けれど――答えは返ってこない。
「ねえ、八雲くん、返事をして!」
グレーのペンで描いた顔についた砂をそっと手で払う。
無言のままのてるてる坊主をもう一度ぎゅっと抱きしめ、ポケットにしまった。
3人も見つけなければ。
八雲くんがここで見つかったということは、他の3人も飛ばされたり弾かれたりで遠くに行ってしまった可能性もある。
日が暮れるまでに間に合うだろうか。
きゅ、と握りしめた指先が冷たい。
「……ううん、間に合うかじゃなくて、見つけるの。何があっても」
そう声に出して自分を奮い立たせる。
その勢いで顔を上げた。
「あ」
八雲くんを見つけた車の屋根に白いものが乗っている。
ぴょんと飛び上がって取ろうとしたけれど、大型車の屋根は高くて届かない。
……ボンネットからよじのぼればいけるだろうか。
「……」
辺りを見回す。人の気配はない。
上を見る。誰も覗いてはいなかった。
「誰の車だかわからないけど……ごめんなさい!」
えいっと膝を乗せる。太陽が長時間当たっていた天板は熱い。
膝でフロントガラスまでにじりよって手を伸ばす。
「えいっ」
今度は見えている分、楽だった。
取り戻したてるてる坊主を覗き込む。
「晴人……!」
オレンジのペンで描いた顔は、屋根に落ちた時の衝撃でたわんでしまっていた。
「晴人、聞こえる? 私だよ、ななみ!」
やっぱり返事は返ってこない。
いつも明るく声の大きな晴人が静かなままなことに、余計に不安を煽られた。
「晴人、返事して!」
何度も揺さぶるように呼びかける。結果は同じだった。
頭の部分を丁寧に整えて輪ゴムを束ね直して、そっと八雲くんと反対側のポケットにしまう。
ずりずりと後ろに這いながら車を降りて、失礼しましたと頭を下げた。
とにかく八雲くんと晴人は見つかった。あとは時雨さんと鳴神だ。
「どこ……どこにいるの」
地面に膝を着いて車の下を一台一台覗き込む。
いない。
視界を徐々に上に上げていく。
まだ姿は見えない。
「落ち着いて、大丈夫、きっと……見つかる」
自分に言い聞かせながら深呼吸を繰り返す。
はあ、と深く息をついたところで、冷たい風が頬を撫でていった。
導かれるように顔を上げる。
どこからか流れてきた黒い雲が低くたれこめていた。
……ひと雨、くるのかもしれない。
もし暗くなるまで見つからなければ、家に帰って明日早く登校しようと考えていたのだけれど――
甘かった。
てるてる坊主はただのティッシュで作られている。
乾いた土の上や車の屋根ならともかく、一晩雨風にさらされてしまったら形を保つことすら難しくなる。
思っているよりも時間がない。


