てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「ええと、ハンカチハンカチ……」
 
 3階から降りる前、窓を閉める時にハンカチを挟んでおいたので、その目印を探しながら校舎に沿って歩く。

 大丈夫かな、飛ばされてないかな。
 
 風は強くなかったから大丈夫だと思うけど。
 
「このあたりのはず……っと!」
 
 上ばかり見て歩いていたら何かを蹴飛ばした。
 
 驚いて下を見れば私のポーチだった。何かの弾みに木から落ちたのだろう。
 
「あった」
 
 急いで辺りに目を走らせる。ポーチに入れていたコームやリップクリームも近くに落ちていた。
 さっとかき集めてひとまずポーチに放り込む。
 そのポーチをしまったリュックを地面に置いた。これで動きやすくなる。
 
 
 その最中、目の端に何かが光った。
 
「っ!」
 
 ばっと顔を上げて目を凝らす。砂利の上にチカリと光るものを見つけて駆け寄れば、ポーチに入れていた鏡が落ちていた。
 
「ああ……割れちゃってる」
 
 拾おうか。どうしよう。
 後でゴミ捨て場に持っていくにしても、不用意に触ると怪我するかもしれない。
 
 うーん、と逡巡しながら覗き込むと――鏡の破片に、白いものがついていた。
 
「!」
 
 そっと剥がすようにつまむ。これはティッシュの切れ端だ。
 てるてる坊主を作った時のティッシュ。
 ああもう、こんなことならティッシュじゃなくて分厚いフェルトで作れば良かった。
 
「どこ? どこにいるの?」
 
 この呼びかけに意味があるのかどうかもわからないまま、あてもなくぐるぐると辺りを見回す。
 
 地面に落ちているのか、はたまたまだ木に引っかかったままなのか、それとも近くの建物の屋根に落ちてしまったのか。
 あてどころのない視線と定まらない焦点に、焦りばかりが募っていく。
 うろうろしながら先生たちの駐車スペースにまで足を伸ばしていると、車の影に何か白いものが浮かび上がった。

 「あ……!」
 
 それがなんなのか、頭が認識するより先に足が動いた。

 地面に寝そべって、車の下に潜り込む勢いでうんと腕を伸ばす。
 目に見えなくても、触れた指がそれを知っていた。
 
「届け……っ」
 
 指先に集中して、優しく、でもしっかりとそれを掴む。

 手のひら全体で丸い部分を包み込むように引っ張り出したそれは――
 
「あ、った……」
 
 グレーのてるてる坊主――八雲くんが、手の中にいた。