てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「ねえ、ほんとにひとりで帰るの?」
 
「……うん。ごめんね、莉亜ちゃんにノート渡すの任せちゃって」
 
「そんなの構わないけど……」


 あの後、トイレには女子たちはいなくなっていた。
 
 千結ちゃんは怒っていたけれど、正直に言って私はどちらでも良かった。
 
 そりゃあ引っぱたかれたのも髪を鷲掴まれたのも痛くて怖かったけれど、それより今のほうがずっと怖くて不安だ。
 
 てるてる坊主は鳴神たちの生命の核だ。
 私の願いと血が宿った、お天気の神様。
 それを私の不注意で失ってしまった。
 
 もう一度新しいてるてる坊主を作ったとして、彼らを取り戻せる保証は無い。
 
 もうすでに手遅れなのかもしれないけれど――そんなことを考えるのも恐ろしくて、でもそんな現実から逃げたくて。
 
 まだうまく自分でコントロールできない腕が震えるのを必死に押さえつけている。
 
「先生に言いつけるなら言ってよ? 証拠写真はあるんだから」
 
 千結ちゃんが自分のスマホをちらりと見せた。

 鳴神たちがここにいれば私と千結ちゃんを抱えあげて職員室に連れていったのだろうなと想像し、ずんと胃が重くなった。
 
 無言で頷いた私の袖を、千結ちゃんがきゅっと握りしめる。
 いつも明るくカラッとした千結ちゃんには珍しい仕草だ。
 
 千結ちゃんは何も聞かないけれど、鳴神たちが何か妙なことになっているということには気づいているだろう。
 
 そうでなければ、4人もの人間が忽然と消えるはずがないのだから。
 
 そして、それが私の行動と結びついていることだって、少し考えればわかることだ。
 
「ごめんね、もっと早く駆けつけてたら」
 
「いいの、千結ちゃんがいてくれてどんなに心強かったかわかんないよ。ほんとにありがとう」

 
 これは本心だ。
 千結ちゃんがいなかったらあの女子たちにもっとひどいことをされてたに違いない。
 
 でも――それとこれとは、話は別だ。
 
「また明日ね。莉亜ちゃんにお大事にって伝えておいて」
 
 なるべく軽く聞こえるようにそう言って、千結ちゃんと校門で別れた。
 
 姿が見えなくなるまで見送って、そのままくるりと踵を返す。
 
 目指すは3階のトイレの真下だ。
 
 あの木から、枝に引っかかったままのてるてる坊主を、鳴神たちを助け出さないといけない。