てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「……よし! こんなもんでしょ。早く吊るしてお願いしないと」
 
 油性ペンのキャップを締めて、散らかったテーブルの上を軽く整理する。
 
 数えてみれば、作ったてるてる坊主は30個を超えていた。
 その中でも、特に顔の出来が良かったのは4つ。
 これを多いとみるか少ないとみるかは、人それぞれだろう。
 
 色にまで凝った渾身の力作だ。
 
 
 オレンジ色で描いたニッコリ笑顔のてるてる坊主。
 
 ネイビーブルーで描いたまつ毛長めのてるてる坊主。
 
 灰色で描いた少し困り顔のてるてる坊主。
 
 レモンイエローで描いた目力の強すぎるてるてる坊主。
 
 
「……途中から目的が変わった気がするけどまあいいか」
 
 カーテンレールにその他大勢のモブてるてる坊主を吊るしていく。
 その時ちょっとアレンジを加えて、まっすぐ吊るすものと逆さのものをごちゃ混ぜにした。

 その方が晴れにしたいのか雨にしたいのかこんがらがって、積乱雲ができるかもしれない。
 
 テレビの天気予報で、雷雲は地上の熱い空気と空中の冷たい空気が混ざりあって生まれるのだと知った。
 その理屈の応用だ。

 こんなに頭をひねりながらてるてる坊主を作っているひとがいったい何人いるだろう。
 自分でも馬鹿だなあと思うけど、このくらいしかできることがないのだ。
 
 最後にテーブルに残された4つの前で正座する。
 
 初詣みたいに大きくパンパンと手を打ち鳴らして、頭を下げて拝んだ。
 
「神さま仏さま、誰でもいいですお天道様! どうか明日のマラソン大会をぶち壊しにするようなめちゃくちゃな天気になってくださいーー!!」
 
 そう一気に叫んでみるも……もちろん何も起こらない。
 
 だよね。そんなファンタジーがある訳ない。
 
 一気に冷めた気持ちになって、でもせっかく作ったんだし飾らないと損だと思って、ひとつずつ持ってカーテンレールに飾っていく。
 作りすぎたせいで場所が足りない。
 
「どうしよう……」
 
 そこで目に付いたのがカレンダーを貼ってある画鋲だ。
 そこに引っかければなんとかなるかも。
 
 ひとつはそこに掛ける。後は隣に同じように画鋲を刺して、そこに……
 
「痛っ」