てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「あんたたち、何してるのっ!」

 
「千結ちゃ、呼び出し、は」
 
「そんなのこいつらの嘘っぱちだったんだよッ! 準備室行ったら先生居なかったの。 教室に戻ってもななみまでいないから、はめられたと思って……」
 
 ぎゅっと眉を吊り上げた千結ちゃんが女子たちを見据える。

 ひとりの手に掲げられたスマホを見て、すかさず千結ちゃんも自分のスマホで彼女たちを連写した。
 
「っ、何すんのッ」
 
「証拠! あと目撃者も追加で!」
 
 
 目撃者?

 
 千結ちゃんが廊下に顔を出して早く早くと手招きしている。
 
 先生を呼んだのかな? でも準備室にはいなかったって言ってたし……
 
 
「ななみ!」
 
 
 姿より先に、声がやってきた。
 
 そのひと言で、全身にビビッと電流が駆け抜ける。
 
「な、るかみ……!」
 
 千結ちゃんを押しのける勢いで、鳴神が入口に立っていた。
 
「ななみーっ」
 
「ななみさん!」
 
「な、ななみさんっ」
 
 晴人、時雨さん、八雲くんの声も聞こえる。
 
 だけど、それに答える余裕はなかった。
 
 鳴神は私を見てぐっと眉を寄せる。頬がそんなに腫れているのだろうか。
 
「……何したかわかってるな?」
 
 鳴神は怒鳴らなかった。
 
 私を囲む女子を順番にゆっくりと見下ろす。
 
 睨みもしない、静かなまなざし。
 
 声色も普段と変わらない。
 
 それが却って恐ろしいのだと、凍りつく女子たちの反応でよくわかった。
 
 怒った先生が一喝する時の大声の方が、よほど優しい。

 それさえやり過ごせば、あとはぬるま湯のお説教タイムだからだ。

 
 けれど、鳴神は違う。
 
 雷鳴は聞こえず黒雲も見えない。
 
 あるのは無音の稲光。
 
 カミナリが落ちる時の目もくらむ閃光。
 
 それが固まってこの場を支配している。
 
 
 これは――まずい。