てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 確かにそうだ。

 突然やってきたイケメン転校生集団が、ひとりの女子に構いっぱなしなんてそうそうある構図じゃない。
 
 漫画だとお互いにとんでもない家柄の出身だとかで親の決めた許嫁とか、ファンタジーなら前世から赤い糸で繋がる運命のひと……とか、そういう関係なのがお決まりだ。
 
 でも私たちは違う。
 
 私はごくフツーの一般家庭の学生だし、彼らに至っては元てるてる坊主だ。
 
 確かにファンタジーもびっくりな能力を持っているとはいえ、私だけの白馬に乗った王子様という訳では無い。

 
 すべては、私がてるてる坊主に願ったことから始まったのだ。
 
 私の願いによって生み出された彼らは、ゲーム風に言うなら主人と使い魔。
 
 だけど、学校においてはクラスメイトだ。
 
 でも、私の手を離れて勝手気ままに天気を操る姿は神様のようでもある。
 
 いったいどれが私たちの関係にふさわしいんだろう。
 
「……あ」
 
 そうだ、いつだったか鳴神が言ってた。
 
 あれは確か、転校生として紹介された日。
 先生に私たちの関係を聞かれた時だ。
 
 ひと言でクラスを大歓声の波に沈めた、あのキザったらしいセリフ。
 
「ねえ、聞いてんの?」
 
 黙りこくった私を真正面の女子が突き飛ばそうとしたのだけれど――
 
 
「シビれるくらい、甘いカンケイ」
 
 
「は?」
 
「そう。鳴神が言ってたの」
 
 確かに、クラスメイトと言うには甘ったるい時もあるし、かと言って人間離れした力を持つ彼らを信仰しているというには雑すぎる扱いをしている自覚はある。
 
 だから私たちの関係は、恋人とか主従とか、そんなありきたりなものじゃなくて、このくらいがちょうどいいってことかもしれない。
 
「天野、鳴神くんが……?」
 
「そう。もう用は済んだ? 私行かないと」
 
 そうだ。莉亜ちゃんにノートも届けなくちゃ。
 
 軽く肩を揺らせば手はどいた。
 ラッキー。このまま帰ろっと。

 
 ……と、思ったのだけれど。
 
 そうすんなり行くくらいならハナから狙われないのであって。