てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 なに? 私がひとりになるのを待ってたの?
 
 そのために莉亜ちゃんと千結ちゃんがいないタイミングを利用したってこと?

 
 それに答えるように、何人かがぞろぞろとトイレにやってきた。
 
 真ん中にいる背の高い子には見覚えがある。陸上部で県大会に出るくらいの実力者だ。
 
 その周りにいる子たちはスラリとしていたり気が強そうだったり……あまり、普段の交友関係では関わらない子たちだ。
 
 
「御空ななみでしょ」
 
「……」
 
「ねえ、答えなよ」
 
 体が強ばる。足が震えないように膝に力を入れて立つ。
 
「私が御空ななみだったら何ですか。まずは自分から名乗るのが礼儀じゃないの?」

 複数に囲まれてビビってるなんて、つけ込まれたら終わりだ。
 
 なるべく低めの声でぶっきらぼうに言い放つ。
 
 そういえば、鳴神も似たような話し方をしていたなと喋っている途中で気づく。

 
 そうか、鳴神の真似をすれば強そうに見えるかも。
 
 ありがと鳴神。
 
 ここにいないのになんだかそばに居てくれる気がして心強いよ。
 
 
 ふ、と口角が上がるのがわかった。
 
 なんだ、意外といけるかも。

 
「ねえ、何笑ってんの」

 
 はっ、もしかしたら余計に怒らせてしまったかもしれない。
 煽ってるように見えたかな?

「……別に。それよりどいてください。用事があるので」
 
 なんでもない風を装ってつかつかと出ようとする……けれど。
 
「奇遇だね。こっちもあんたに用事があるんだ」

 やっぱり上手くは行かなかった。
 
 肩を掴まれて押し戻される。
 
 不用意に手を振り払って付け入る隙を与えたくない……けれど、されるがままもイヤ。
 
 なんでこんなことに。
 
「天野4兄弟の姫、とか呼ばれて調子に乗ってンじゃないの」
 
 あー、やっぱりそれ案件か。
 
「言っておくけど、姫なんて自分で言い出したんじゃないですからね」
 
 そんなイタイ子だと思われていたらそっちの方がイヤだ。

 訂正できるところではしておきたい。
 
「そんなのどっちだっていいわよ。あんた、天野くんたちの何なの?」
 
「何って、そりゃあ……」
 
 そこで言葉が止まる。

 
 私、あの4人の何なんだろう?