てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 その日、莉亜ちゃんは風邪で欠席した。
 
「千結ちゃん、帰りに莉亜ちゃんにノート届けに行こう」
 
「うん。テストも近いしね」
 
 放課後、お手洗いの洗面で髪型をチェックしながらそんな話をしていると、入ってきた隣のクラスの子が千結ちゃんを呼んだ。
 
「先生が呼んでる。委員会のことらしいけど? 国語科準備室だって」
 
「えーっ」
 
 露骨に嫌な顔をした千結ちゃんにくすりと笑う。
 
 ここは3階。職員室は2階だけれど、ちょうどこことは対角線の位置にある。地味に距離があるのだ。
 
「行ってきなよ」
 
「うん……」
 
 そこで千結ちゃんは口ごもった。きっと、晴人たちからのお願いを気にしているのだろう。
 
「私なら大丈夫。早く行かないと先生に怒られちゃうよ」
 
「……っ、わかった。ごめん。すぐ戻るから教室にいて」
 
 
 そう言うと千結ちゃんは廊下に駆け出していった。
 
 私もお手洗いから出ようとポーチを持ち直す。
 
 これはてるてる坊主を入れている透明なポケットと、ちょっとした小物を入れておけるスペースが分かれていて重宝しているのだ。

 ぬい活が流行っていて本当に良かった。
 
「……あの、どいてくれる?」
 
 入口にさっきの子が立っているので通せんぼされて出られないのだ。
 
 もう千結ちゃんに用は済んだし、トイレに入りたいならそうすればいいのに……
 
 
 けど、その子は私に取り合わず、廊下側に向かって声をかけた。
 
 
「ひとりになったよ」
 
 
 その意味を把握して、背筋がゾッとした。