「わああ……!!」
七色の架け橋が私たちを覆うようなアーチを描いている。
ぼんやりかすむ虹のふもとに目を凝らしていると、時雨さんの穏やかな声音が語りかけるように耳に優しく響く。
「雲が雨を呼び、たっぷり潤った空気の中でこそ、太陽の光は様々な色を得て一瞬の輝きを華やかに彩ってくれる……光の織り成す幻は様々なものを見せてくれますね」
「……それって、なんだかみんなのことみたいだね」
「え?」
「八雲くんの雲と、時雨さんの雨……それを晴人くんが太陽で照らしてくれるから、鳴神みたいにきらきら輝いて、見る人を笑顔にするの」
「ななみさん……」
時雨さんがふっと目を伏せた。
八雲くんのつぶらな瞳がうるうるだ。
晴人は照れくさそうに頬を掻いている。
鳴神は……
鳴神は、こちらを見て、静かに目を細めた。
普段見せない反応に、鳴神の知らない一面を知れて胸の奥がざわつく。
「……カミナリ、直接は関係ないやつだな。そのポエム」
「んなっ」
なんてやつ! せっかくいい感じにまとめようとしたのに!
「私の感想をポエム扱いしないでくれるかなあ!?」
「実際そーだろ。カミナリは虹を作らねえぞ」
「いや、でも雷雨の後とか……」
「だから必須条件じゃねえってこと。トンチンカンなこと言うな、ななみは」
フッとニヒルに笑う鳴神はいつもの意地悪鳴神だ。
ほんと、ああ言えばこう言うって鳴神のためにある言い回しだよね!
「トンチンカンで悪かったわね! 鳴神だけ仲間外れにしたら可哀想だから入れてあげたんじゃない!」
「それならお前だって同じだろ」
「……へっ?」
「虹を作るのは雲に雨に太陽……まあ雷雨もありってことにしてやるけど。そこにお前がいないんじゃ意味ねえだろ」
「え……で、でも私はただ見てるだけだよ? 虹なんて作れないし……」
「虹だろうが雨だろうが、見てるヤツがいるから名前がつくんだ。それを喜ぶヤツがいるからこうやってショーにもなる。確かにお前は虹の発生には関係ないが、お前がいなかったら虹はただの水滴と光の乱反射でしかない。それにさ……お前、自分の名前わかっててそれ言うのか?」
「な、名前って……あ」
御空――ななみ。
空。7。
虹を形作るためのものが、私の名前にも入ってる。
「だからさ、ななみも虹のひとつってこと。俺らと同じで、仲間外れなんかじゃない」
鳴神は……ずるい。
普段めちゃくちゃ失礼なくせに、こういう時に限って、優しい。
私の卵焼き取ったり、ばかって言ったり、鼻噛んだりするけど……私を、ひとりぼっちにしておかない。
「鳴神……」
「ん?」
「鳴神のポエム、完成度高い。やるじゃん」
「んなっ……お前なあ! 誰がポエムだ、誰が!」
「鳴神もポエム扱い嫌なんじゃん。自分がされてヤなことは他人にしたらダメなんだよー」
「……ああ言えばこう言うオンナ」
「そっちもね」
私と鳴神の口喧嘩もお馴染みになってきたのか、誰も本気で止めようとしない。
時雨さんは我関せずと食後のお茶を飲んでいるし、晴人はまだおなかいっぱいにならないらしくもう1回購買に行きたそうだ。
かと思えば八雲くんはまだゆっくり食べている。
こんなバラバラな私たちの時間がずっと続きますようにって……そう、思っていたんだ。
だから、校内から向けられているカメラが虹じゃなくて私を捉えていたことなんて、知る由もなかった。
七色の架け橋が私たちを覆うようなアーチを描いている。
ぼんやりかすむ虹のふもとに目を凝らしていると、時雨さんの穏やかな声音が語りかけるように耳に優しく響く。
「雲が雨を呼び、たっぷり潤った空気の中でこそ、太陽の光は様々な色を得て一瞬の輝きを華やかに彩ってくれる……光の織り成す幻は様々なものを見せてくれますね」
「……それって、なんだかみんなのことみたいだね」
「え?」
「八雲くんの雲と、時雨さんの雨……それを晴人くんが太陽で照らしてくれるから、鳴神みたいにきらきら輝いて、見る人を笑顔にするの」
「ななみさん……」
時雨さんがふっと目を伏せた。
八雲くんのつぶらな瞳がうるうるだ。
晴人は照れくさそうに頬を掻いている。
鳴神は……
鳴神は、こちらを見て、静かに目を細めた。
普段見せない反応に、鳴神の知らない一面を知れて胸の奥がざわつく。
「……カミナリ、直接は関係ないやつだな。そのポエム」
「んなっ」
なんてやつ! せっかくいい感じにまとめようとしたのに!
「私の感想をポエム扱いしないでくれるかなあ!?」
「実際そーだろ。カミナリは虹を作らねえぞ」
「いや、でも雷雨の後とか……」
「だから必須条件じゃねえってこと。トンチンカンなこと言うな、ななみは」
フッとニヒルに笑う鳴神はいつもの意地悪鳴神だ。
ほんと、ああ言えばこう言うって鳴神のためにある言い回しだよね!
「トンチンカンで悪かったわね! 鳴神だけ仲間外れにしたら可哀想だから入れてあげたんじゃない!」
「それならお前だって同じだろ」
「……へっ?」
「虹を作るのは雲に雨に太陽……まあ雷雨もありってことにしてやるけど。そこにお前がいないんじゃ意味ねえだろ」
「え……で、でも私はただ見てるだけだよ? 虹なんて作れないし……」
「虹だろうが雨だろうが、見てるヤツがいるから名前がつくんだ。それを喜ぶヤツがいるからこうやってショーにもなる。確かにお前は虹の発生には関係ないが、お前がいなかったら虹はただの水滴と光の乱反射でしかない。それにさ……お前、自分の名前わかっててそれ言うのか?」
「な、名前って……あ」
御空――ななみ。
空。7。
虹を形作るためのものが、私の名前にも入ってる。
「だからさ、ななみも虹のひとつってこと。俺らと同じで、仲間外れなんかじゃない」
鳴神は……ずるい。
普段めちゃくちゃ失礼なくせに、こういう時に限って、優しい。
私の卵焼き取ったり、ばかって言ったり、鼻噛んだりするけど……私を、ひとりぼっちにしておかない。
「鳴神……」
「ん?」
「鳴神のポエム、完成度高い。やるじゃん」
「んなっ……お前なあ! 誰がポエムだ、誰が!」
「鳴神もポエム扱い嫌なんじゃん。自分がされてヤなことは他人にしたらダメなんだよー」
「……ああ言えばこう言うオンナ」
「そっちもね」
私と鳴神の口喧嘩もお馴染みになってきたのか、誰も本気で止めようとしない。
時雨さんは我関せずと食後のお茶を飲んでいるし、晴人はまだおなかいっぱいにならないらしくもう1回購買に行きたそうだ。
かと思えば八雲くんはまだゆっくり食べている。
こんなバラバラな私たちの時間がずっと続きますようにって……そう、思っていたんだ。
だから、校内から向けられているカメラが虹じゃなくて私を捉えていたことなんて、知る由もなかった。


