てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 普通教室棟と特別教室棟に挟まれた中庭は、お昼を過ごすには丁度いい。
 
 私たちと同じようにお弁当を広げるグループや、木の下で昼寝している子もいる。
 
 そんな彼らのランチタイムに割り込んでしまった気がしたのは……いつも賑やかなはずの中庭からお喋りの声がボリュームダウンしたからである。
 
 
「……どうした。お前まで黙りこくって」
 
 鳴神はさっき食べ始めたばかりなのに、パンはもう残り数口になっている。
 
 足が速いのはいいけれど早食いは体に悪いと思う。
 
 
「い、いや、大所帯でお邪魔しちゃったかなあ、と」
 
 ちらりと周りを見れば、私たちのいる中央のベンチから波が引くように下がって言った生徒たちが、ちらちらとこちらを見ながら噂話に花を咲かせているようだ。
 
 確かにこんなところを見せていたら、姫だなんだと言われても仕方ないかもしれない。
 
 
 ……私は姫ではないのだけれど。
 
 
「別に追い払ったわけじゃない。あいつらだってこっちに来たきゃ来ればいいのさ」
 
 そう言いながら、鳴神は私のお弁当箱から卵焼きをつまんでぱくりと口に入れた。
 
 流れるような早技に止める暇もなかった。
 
「えっ!? ちょ……」
 
「ごちそーさん。ななみの母さん、料理上手いな」
 
「それはどうも……ってもう食べたの? ばか! 取ったなら味わって食べてよね!」
 
「だから感想言っただろ。お前の母さん料理上手いなって」
 
「ぬー!」
 
 私の勢いが飛びかからんばかりだったのか、慌てて八雲くんがメロンパンを差し出した。
 
「ほ、ほらななみさん。卵焼きの代わりにはなりませんが……」
 
「八雲くぅぅん」
 
 拝みながらメロンパンを受け取って日にかざすと太陽のように輝いている。
 
 鳴神に八雲くんみたいな細やかな気遣いを見せてくれとは言わないけれど、もう少し落ち着きってものはないんだろうか。
 
「……まあ、確かに……ななみさんが居心地悪そうにされているのもわかります」
 
「ああ。人の口に戸は立てられないってヤツだな」
 
 時雨さんと晴人が小さく溜息をつく。彼らにも噂話は聞こえているようだ。
 
「ど、どうする? やっぱり教室に帰った方がいいかな」
 
 そっと耳打ちするように顔を寄せると、晴人は笑った。
 
「堂々としてりゃいいのさ。そうだな……どっちにしろ噂が避けられないって言うなら、そっちを塗り替えちまおう」
 
 晴人が時雨さんに、目配せする。
 それだけで意味するところが伝わったらしく、時雨さんは頷いて胸の前で小さく人差し指と中指を揃えて印を結んだ。
 
「え」

「お昼休みにふさわしいショーをご覧に入れましょう」