「ねえ、中庭で食べない?」
「お、食欲出た?」
「ちょっと息詰まってきたからさ。莉亜ちゃんも2個目のサンドイッチは青空の下で食べようよ」
「んー、それはいいけど……」
ハムサラダサンドを袋に戻した莉亜ちゃんは苦笑しながら教室のドアを指さした。
きゃあ、と女子の黄色い悲鳴が聞こえる。
「戻った。メシ行くぞ」
背後からとんと机に手を突かれる。後ろから抱きしめられているような体勢。
「鳴神!」
「ん」
振り向くと思ったより近くに顔があって慌ててのけぞる。
相変わらず距離が近いんだから!
「戻りました。寂しくなかったですか?」
時雨さんが優雅に手を振りながら教室に入ってくる。
どこかの貴族みたいな洗練されたふるまいに、周りの女子がほうっと溜息をついた。
「メロンパン……最後の1個、買ってきました。ななみさん、好きですもんね?」
その後ろでにっこり笑うのは八雲くんだ。
……ん? 待って。
確かにメロンパンは好きだけど話した覚えはないよね?
「千結、莉亜! 俺らがいない間、ななみと一緒に居てくれてありがとなー。っつーことでこれはお礼っ」
晴人が千結ちゃんと莉亜ちゃんの前にとんとんとプリンを置いた。
えっ、購買で1番人気、争奪戦必死ののなめらかプリンをふたつも!?
「わあ! いいの? 食べてみたかったんだ〜」
「美味しそう! 晴人くんって優しいね」
きらきらと輝くふたりの瞳は、晴人ではなくプリンに向けられているような……
っていうか千結ちゃんも莉亜ちゃんも、晴人たちといつそんな取引(?)を!?
「いいってことよ。女子同士積もる話もあるだろうけどさ、こっからは俺らがななみの時間、もらっていいか?」
「どうぞどうぞー!」
「ええええ!?」
一も二もなく頷いたふたりにこっちが驚いた。
待って、どこから仕組まれてたの? 私の意思はいずこ?
きょろきょろと目を泳がせる私に、千結ちゃんがこそっと顔を寄せる。
「晴人くんたちに頼まれてるのよ。俺らのお姫様って噂が悪目立ちして、変なのに目をつけられてそうだから、ガードしてくれって」
「えっ」
今日何度目かの「いつのまに」だ。
私が知らない間にいろいろな思惑が水面下で動いてる気がする。
何も考えずに青春を楽しんでいそうな4人なのに……実はいろいろ気を遣ってくれてるみたい。
そしてそれは千結ちゃんと莉亜ちゃんも同じだ。
「あ……ありがとう。ごめんね、私、ふたりにそんな迷惑かけちゃって……」
「何言ってるの!」
「そうだよ。ななみちゃん、何も悪いことしていないよ?」
申し訳なくなって縮こまると、ふたりが息のあったユニゾンでそれぞれ私の肩を掴んだ。
「ていうかそんな状態のななみをほっといて何かあったら私は自分を許せないし」
「もし立場が逆だったら、ななみちゃんだってそうしてくれると思うよ? 私たち、友だちだもの」
「千結ちゃん、莉亜ちゃん……!」
あ、どうしよう。涙腺にくる。
これが熱い友情ってやつなのね……
「美味しいプリンももらったことだし♪」
「甘いものは別腹なの♪」
……あれ?
友情どこいった?
結局、友情と買収の狭間で混乱する私は、千結ちゃんたちに手を振られながら晴人たちに連れられて中庭に向かったのであった……
「お、食欲出た?」
「ちょっと息詰まってきたからさ。莉亜ちゃんも2個目のサンドイッチは青空の下で食べようよ」
「んー、それはいいけど……」
ハムサラダサンドを袋に戻した莉亜ちゃんは苦笑しながら教室のドアを指さした。
きゃあ、と女子の黄色い悲鳴が聞こえる。
「戻った。メシ行くぞ」
背後からとんと机に手を突かれる。後ろから抱きしめられているような体勢。
「鳴神!」
「ん」
振り向くと思ったより近くに顔があって慌ててのけぞる。
相変わらず距離が近いんだから!
「戻りました。寂しくなかったですか?」
時雨さんが優雅に手を振りながら教室に入ってくる。
どこかの貴族みたいな洗練されたふるまいに、周りの女子がほうっと溜息をついた。
「メロンパン……最後の1個、買ってきました。ななみさん、好きですもんね?」
その後ろでにっこり笑うのは八雲くんだ。
……ん? 待って。
確かにメロンパンは好きだけど話した覚えはないよね?
「千結、莉亜! 俺らがいない間、ななみと一緒に居てくれてありがとなー。っつーことでこれはお礼っ」
晴人が千結ちゃんと莉亜ちゃんの前にとんとんとプリンを置いた。
えっ、購買で1番人気、争奪戦必死ののなめらかプリンをふたつも!?
「わあ! いいの? 食べてみたかったんだ〜」
「美味しそう! 晴人くんって優しいね」
きらきらと輝くふたりの瞳は、晴人ではなくプリンに向けられているような……
っていうか千結ちゃんも莉亜ちゃんも、晴人たちといつそんな取引(?)を!?
「いいってことよ。女子同士積もる話もあるだろうけどさ、こっからは俺らがななみの時間、もらっていいか?」
「どうぞどうぞー!」
「ええええ!?」
一も二もなく頷いたふたりにこっちが驚いた。
待って、どこから仕組まれてたの? 私の意思はいずこ?
きょろきょろと目を泳がせる私に、千結ちゃんがこそっと顔を寄せる。
「晴人くんたちに頼まれてるのよ。俺らのお姫様って噂が悪目立ちして、変なのに目をつけられてそうだから、ガードしてくれって」
「えっ」
今日何度目かの「いつのまに」だ。
私が知らない間にいろいろな思惑が水面下で動いてる気がする。
何も考えずに青春を楽しんでいそうな4人なのに……実はいろいろ気を遣ってくれてるみたい。
そしてそれは千結ちゃんと莉亜ちゃんも同じだ。
「あ……ありがとう。ごめんね、私、ふたりにそんな迷惑かけちゃって……」
「何言ってるの!」
「そうだよ。ななみちゃん、何も悪いことしていないよ?」
申し訳なくなって縮こまると、ふたりが息のあったユニゾンでそれぞれ私の肩を掴んだ。
「ていうかそんな状態のななみをほっといて何かあったら私は自分を許せないし」
「もし立場が逆だったら、ななみちゃんだってそうしてくれると思うよ? 私たち、友だちだもの」
「千結ちゃん、莉亜ちゃん……!」
あ、どうしよう。涙腺にくる。
これが熱い友情ってやつなのね……
「美味しいプリンももらったことだし♪」
「甘いものは別腹なの♪」
……あれ?
友情どこいった?
結局、友情と買収の狭間で混乱する私は、千結ちゃんたちに手を振られながら晴人たちに連れられて中庭に向かったのであった……


